第9話

 ある日の授業後。

「あ、あのっ、雨宮先生!」

「なあに?」

「その……年賀状、出したいので、その、住所……教えてもらっていいですか?」

「年賀状くれるの? ありがとう!」

 やった! 雨宮先生と住所の交換ができた! 年賀状、はりきって書くぞ!

 生徒手帳の1ページに、綺麗な字で書いてもらった雨宮先生の住所。

 これだけでも、私は幸せだな……。


 またある日の授業後。

「来年の担任は雨宮先生がいいです!」

「ふふ、嬉しいな。そう言ってくれた子は初めて。……でも、それは叶わないかな……。」

 ぱっと花が開いたみたいな笑顔を見せてくれたと思ったら、すぐその花はしおれちゃった。どうして。

「私、1年間だけの契約なの。」

「契約?」

「臨時的任用、というのだけれど。簡単に言えば、期間限定の先生ね。私は、この3月までしかこの学校にいないの。4月からは別の学校でお仕事するの。」

「そう、なんですか。」

「だから、3月まで私の授業、楽しんでくれると嬉しいな。」

 え、雨宮先生が、いなくなっちゃうの。そんな。

 私、これからどうやって頑張ればいいの!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る