あの陰キャな日向さんが僕にだけやたらと懐く件
結城辰也
第一章 なぜか日向さんに懐かれた編
第1話 陰キャの日向さん?
噂に聞くだけでどこにもいない。学校七不思議なのでは? と思いたくなる。
なんでも猫のように日陰を好み隠れている同級生がいるらしい。その名も
僕は納得がいかなかった。そもそも日向ぼっこの日向だ。真逆な性格に怒りが隠せなかった。短気なのは分かる。でも捜さずにはいられなかった。
にしてもだ。本当にどこにいるんだ? 日向さんは――。
陰がありそうなところといえば校舎裏とか体育館とかあると思う。でも見つからないでいた。どうやら僕と日向さんは相性が悪いらしい。きっと出会ってもなにも起きないだろう。
こんなにも見つからないはまるで僕が馬鹿みたいじゃないか。ほんとに。せっかくの休み時間が台無しだ。あーなんかカクレンボに負けた気分だ。ほんとに。
といいつつも最後の望みを託し僕は学校内の保健室にきていた。もうここでもないなら日向さんは休みか。あるいは――。
「日向さん? たまには外に出たら?」
保健室の先生の声だ。言うまでもなく日向さんがいるようだ。別人でなければいいけど。引き戸を開けつつ僕の本音が漏れた。中に入ると保健室の先生と目が合った。
「あら?
僕の名字を憶えてくれていたのは嬉しいけどなんで日向さんと同類なんだろうか。なんか納得がいかないな。にしても――。
「ここにいるんですね? 日向さんが」
ようやくだ。謎に丸まったこの布団の中に日向さんがいる。凄まじいくらいだ。それはまるでこたつの中の猫のようだった。
「いるわよ。いつものようにね」
なるほど。ここが日向さんのホームという訳か。
「ところで二人とも」
僕と日向さんで二人か。うん? このパターンは――。
「私はここを離れるから後はよろしくね」
やはりか。うーん。まぁ別に二人きりになってもなにも起きないしな。ここは――。
「はい! 分かりました!」
「フゴゴ。フゴ。フゴゴゴ」
なに言ってるんだ?
「はいはい。遅くならないようにするわね。小向さん」
僕には理解出来ないのに保健室の先生は凄いな。それくらいに付き合いが長いのか。
「それじゃ」
忙しそうな保健室の先生は僕と日向さんをおいてどこかに行ってしまった。最後まで見届けると僕は視線を切り替えた。そもそもの目的は日向さんだからな。
「さてと」
どこから手を付けようか。というよりもまずは自己紹介からかな。
「日向さん! 初めまして! 僕は横谷と言います! 今日からよろしくお願いします!」
返事がない。反応もない。無視されたのかも分からない。なんだか複雑な気分にもなった。それでも三重苦に負けまいと果敢に挑もうとしたその時だった。布団の中で蠢く日向さんがいた。なんだか異様な空気圧だ。
「フゴゴ? フゴゴゴ!?」
ううん? 理解不能だ。もうどうしたら分からずにいたらチャイムが鳴った。休み時間はもう終わりだ。うん。戻るか。そう思い離れようとした途端に慌てた様子で布団の中から小向さんが出てきた。
「私も連れてって! 横谷くん!」
へ?
「あ」
なんだ? なんだ? てかベッドの上に立ってるよ。小向さん。あーでもこれっていきなり攻略完了って奴なんじゃ――。
「いいんだよ、甘えたって。行こう! 僕たちの教室へ」
「うん!」
なんだか分からないけど日向さんは急にやる気を出してきた。もっと事は深刻だと思っていた。なのに今日の僕は運がいい。
ここからだ、僕と小向さんの物語は。
あの陰キャな日向さんが僕にだけやたらと懐く件 結城辰也 @kumagorou1gou
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