第75話

 りっくんが目を丸くして、それからすごく綺麗に笑った。

「いいよ。俺は全然構わない。…つか」

 大きな手が、僕の頬を包んだ。手のひらがしっとりしてる。


「空を抱いたら、これまでのことなんか全部上書きされて残んねぇよ」

「…ほんと…?」

「ほんと。キスも、もう空の唇しか思い出さないし、抱きしめる感触も空だけだ。他なんて思い出さない。…そもそも覚えてもねぇけど」

「…っくん…っ」


 そんな言葉聞かされたら嬉しくて

 嬉しくて嬉しくて

「りっくんだいすき…っ」

「っわ、空…っ」

 力いっぱい抱きしめて見上げたら、りっくんも嬉しそうに笑った。

 キラキラ、キラキラ、光の粒が舞うような笑顔だ。


「…ほんと空はさぁ…、可愛くて可愛くて…、もう、なにその笑顔。俺をどうしようとしてんの?何回惚れ直せばいい?」

 くすくす笑いながら、りっくんはスッと屈んで僕を抱き上げた。

 お、お姫様抱っこだ…っ


「空も、神谷くんにされた抱っこの感触、忘れて?」

 じっと目を見てりっくんが言う。

「わ、すれた…もう」

 高さと安定感が全然違う、ような気がする。もう分かんない。

「そう?よかった。…ちょっと、やだったんだよね」

 りっくんが、ゆっくりと僕をベッドに下ろした。


「空…」

 僕の名前を呼ぶりっくんの吐息が、唇に触れた。

「好きだよ、空。空だけが好きだよ。小4で空に出会ってからずっと、空のことだけが好きだ」

 僕を見下ろしながら低い声でりっくんが囁いた。

 甘い告白に、横たわっているのに目眩がする。


 りっくんの唇が、額に、頬に、唇に触れた。

 顔中にキスの雨を降らされて溺れそうになる。

 軽い口付けを何度も繰り返して、徐々に唇が深く交わっていく。

 まだ、上手く息ができない。


 舌を絡め合うキスで、どんどん体温が上がっていく気がした。

 りっくんの舌が僕の口角をくすぐるように舐めた。


「ごめん、空…。たぶん俺、ブレーキ壊れてっからやだったら殴って止めて」

「え…?あ…」

 りっくんの唇が首筋に優しく口付けた。くすぐったいにすごく近い、でもなんか違う感覚に身体が捩れる。

 

 首筋にキスしながら、りっくんの大きな手がカットソーの中に侵入してきた。

 熱い手のひらが肌を撫でていく。徐々に上に上がってきて…、

「…あ…っ」

 胸の先を触られた。


 

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