硬派な魔道司書とギャル魔道書の出会い。 あなたが望む景色を見せてあ・げ・る。 もちろん対価はもらうけど♡

最時

第1話 ギャル魔道書

 出張で来た名古屋に泊まって、休日の今日は古本屋を訪れた。

 一冊一冊、背表紙を集中して見ていく。

 

 中古のマンガなどを扱うチェーン店と違っていわゆる古書店だ。

 一部のマニアが訪れる店。

 静かな圧迫感とホコリとカビと紙の匂い。

 決して良い物ではないと思うのだがそこまで嫌と思わないのは、俺も一部のマニアと変わらないのかも知れない。

 ただ、俺は一部のマニアでないがたびたび古書店を訪れている。

 俺は魔道司書だ。


 一般には知られていないが世の中、古の魔導師が作った魔道書が出回っている。

 だいたいは人畜無害で有益な物もあるのだが、危険なものもあり、しかるべき管理をするのが俺の仕事だ。


 仕事と言ってもボランティアのようなもので報酬などほぼ無い。

 代々先祖から継いでいる仕事だ。

 報酬はないが、世間に知られていない神秘を知り、扱うことが出来るこの仕事を俺は気に入っている。


 というわけで出張先の休日に古本屋巡礼するマニアな事をしているわけだ。

 といってもそうそう見つかる物でない。

 俺が発見しているのはだいたい年に一冊程度で、それでもかなり多いと評価されている。

 それらを発見しているのはいずれも地元の書店の定期点検で、こちらはこちらでこちらの司書が見回っているはずだからいっそう見つからないだろう。

 それでもこうして探しているのは古本屋と魔道司書の仕事が好きなんだろうなと、にわかに認めたくないのだが。

 なにかの魔道書に精神を侵食されているんじゃないかと。


 そんなとことを考えていると、信じられないことに魔道書らしきものが目に付いた。

 なんて言ったら良いのだろうか。

 他の本とは違う明らかな違和感を感じる。

 この感覚が魔道司書の重要な能力だ。


 古い紙の本が並ぶ中、革装丁された本。

 魔道司書の能力とは別に違和感ありありだった。

 こんなあからさまに魔道書が見つかることなどこれまでなかった。


 警戒しながらも棚から引き抜く。

 触れて間違いなく魔道書であることを感じる。

 触れただけでは励起はしないようだ。

 危険な魔道書の可能性もあるため本来なら開くべきではないのだが、俺は開いてしまった。


「もー、ちょー待ってたんですけどー。マジ何年ぶり」

 本から声がする。しかしそれは鼓膜を介さずに直接頭の中に聞こえていることに気づく。

「意思を持った魔道書! それに干渉されている!!」

 閉じれない。血の気が引いた。

「こんな魔道書が市中で見つかるなんてどういうことだ」

「どうもこうもないから、あたしだって来たくて来たんじゃないからね。だけど開いてくれてサンキュー。あたしの力でおにーさんが見たいものを見せてあげる」

 本が光る。

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