第2話 ルーチン

俺が魔天聖愛学園ビバ・ラブアカデミーに通うようになってから既に二週間経つ。


「敬礼!」


教室に入ると、クラスの全員が慌てて席から立ちあがった。

そしてモモミの号令に合わせ、腰を90度曲げる形で俺に向かってお辞儀する。

もう見慣れた光景なので軽く手を上げて答え、俺は席に着いた。


え?

何をしたのかって?


単に生意気な奴らにお灸を据えまくっただけである。

すると特に死人を出した訳でも無いのに、何故かこうなった。


俺は喧嘩を売って来さえしなければいいと、そう思ってただけなんだがな。

ほんっと、謎な奴らである。

魔物の考える事はよく分からん。


因みに、最初は力を隠そうかなとも思っていたんだが……


初日から結構な頻度で喧嘩売られて、面倒くさいなとなって即時撤回した。

余りにも面倒くさすぎて。

魔物ってのは喧嘩っぱやくて困る。


「では……」


教師がやってきてホームルーム終え、そして授業が始まる。

内容は一般的な教養関連。

数学国語歴史なんかだ。


魔物がそんなもん習ってどうするんだよって、ゲーム脳ならきっとそう考える事だろう。


確かに魔物は力や特殊な能力を尊ぶ種族だ。

それはこの世界でも変わらない

だがこの世界の魔物は単純な脳筋のそれではなく、高い知能で文明的な社会を構築していた。


つまり、魔物の癖に人間の様な生活をしているという事だ。

なのでここみたいな学校もあるし、勉強もする。


――そしてだからこそ、俺はこの魔物の世界をぶっ壊せずにいるのだ。


そもそも、俺がこの魔物や魔族と呼ばれる奴らが支配する世界に来たのは、異世界ファーレスで倒した魔神帝ラスボスの記憶を読んでの事。


実は奴は、元々はこの魔界と化す前の世界の、ラブという名の人間の勇者だったのだ。

そして勇者として戦い、魔王をあと一歩——もう何なら、あと一振りで勝負がつくところまで追い込んでいた。


だがその直前、ファーレスの住人による勇者召喚でこの世界を強制的に去る羽目になり――


その結果、この世界は魔族が人類との覇権争いに勝利してしまう。


そして異世界召喚と言う名の誘拐を決められたラブは、肉体を無理やり改造され。

しかも自分の守ろうとしていた世界が滅んだ事を知って精神が狂い。

結果、魔神帝と呼ばれるファーレス最悪の災いへとなってしまう事になる。


まさに聞くも涙。

語るも涙の物語。


まあぶっちゃけ、異世界での出来事。

しかも完全な他人事なので、本来なら俺の気にする様な事ではない。


のだが、これでも俺は一応勇者だからな。

そんな記憶を見せられて放置するのは、余りにも寝覚めが悪いという物。


だから奴に変わって、魔物共を滅ぼしにこの世界にやって来た訳だが……


いや文明築いて文化的に暮らしてるとか、滅ぼしにくいったらありゃしない。

なんも考えてない化け物共なら、さっさと全滅させていい事したって悦に浸って帰れる物を……お陰で果てしなく厄介な事になってしまった。


んでまあどうした物かと、今現在絶賛迷い中って感じである。


――この魔天聖愛学園ビバ・ラブアカデミーに通いながら。


え?

なんで学園に通ってるのかって?


答えは二つ。


一つは、俺が学生であるためだ。

まだ16歳だし。


つまり高校生!

学校に行くのは当たりまえ!


んでもう一つは、この世界の魔族の持つ戦闘や魔法の技術を手に入れる為だ。


召喚された異世界ファーレスでの一件を終えた俺は、地球へと帰還しようとしていた。

が、地球の神に、俺は理不尽な理由で追い出されてしまう。

二度と帰ってくんな的に。


理由は超危険人物だから。


全くふざけた話である。

で、その報復にいつか絶対神を泣くまでボコボコにしてやろうと心に誓ってる訳だが、残念ながら現在の強さでそれを叶えるのは難しい。

だからこの世界の技術を吸収し、強くなってリベンジを測る予定なのだ。


地球の神め!

首を洗って待ってろよ!

この墓地無双様が泣くまでボコボコにしてやるからな!


という訳で、俺は真面目に――居眠りする。


いやだってこの学園、最初の1月は教養科目だけなんだよな。

俺が求めてるのは戦闘とか魔法系なので、そういうのは別に求めていないのだ。


だから寝る!

以上!

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