小寺池書店へようこそ

サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ)

小寺池書店へようこそ

同窓会の帰り道。気分はどんよりスッキリしない。


久ぶりに会った同級生は各々の人生を謳歌している様に見える。


中でも一番の親友だったあいつは、今ではスポーツジムを幾つも経営して

セレブな生活を紹介する有名人になっていた。


それに比べて今の俺はどうだ。

特に有名でも名門でもない大学を出て、

優良でも有名でもない企業に就職し

華々しさもなければ、金持ちでもセレブでもない。


あぁ確かに俺は何の取柄もない

ふつーーの人間でございますよ。


同窓会は自分の敗北を認める会なのか?来るんじゃなかったと後悔した。


そんな時あの看板が目に入った。


「問題解決なら小寺池書店こでらいけしょてん


本屋が問題解決するなんて聞いたこともない。


こんないい加減な書店の正体を暴いてやるっ!

憂さ晴らしをしてやろうと書店を探す。


看板の地図の通りに行くとその書店は意外にすぐ近くにあった。

繁華街なのに静かな佇まい。赤レンガの門には蔦が絡まり女子ウケしそうだ。


扉を開けるとカウンターがあり、その奥には図書館の様な書架が沢山。

さらにその奥には池があり柳の木の側にはペンチがあった。


何か言う前にカウンターにいた女性が声をかけてきた。


「問題解決がお望みですね?」


問題?このむしゃくしゃした気持ちは問題かもしれないと感じたので

「はい。」と答えてみた。


「では池のベンチに座って池を眺めて下さい。」

「眺めたら問題は解決するのかい?」

「行けばわかります。」

女性はニコリと口角を上げ池の方に顔を向けた。


とりあえず言われるまま池を眺めた。


池には成功した親友の顔が浮かんでいる。

多くの人が親友を取り囲み問いただす怒号がする。


「報道は本当なんですか?」

「受け取ったお金は何に使ったんですか?!」


責めたられる親友の顔は苦痛に歪んでいた。


遠くから声が聞こえた。

「普通っていいですよね。」


羨ましいと思っていたことがバカバカしく今の普通の自分で良かったと思えた。

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