例えば、とある街角で
有宮旭
古本屋にて迷う
うーむ、どうしたものだろう。
段ボール箱に詰められているのは、俺が昔資格を取るために使った参考書たちだ。この参考書の山をどうするべきか、あろうことか古本屋に持ってきてから車の中で悩みだした。
歴史書と参考書は、新しいほど時代に沿って変わるものだ。過去の参考書に、果たしてどれだけの価値があるのだろう。二束三文で売れればいいものの、「これはもう時代遅れですね、当店では買い取れません」なんて言われた日には、参考書とともに途方に暮れてしまう。
かと言って捨てるにはしのびないものがある。愛着は…特にないけれど、資源ごみとして出すにも学校の資源回収に出すにも、ちょっと量が多すぎる。何よりも、何も書き込んでなければ破れてもいない、きれいな参考書たちだ。もしかしたら需要があるかもしれない。
ありふれた古本屋に持ってきたのが間違いだったかもしれない。もっと、それこそ神保町のような古本屋街なら、資格専門の古本屋があるのかもしれないじゃないか。……想像するだけならいいものだが、あいにくあんな都会にわざわざこの量の参考書を持っていくだけでも一苦労だ。そもそも、神保町になんて行ったことはない。本当にそんな古本屋があるかわからない。
…えぇい、ままよ!いちかばちか、賭けてみるか!そう思い立ち、段ボール箱を持って古本屋の前に立った。そこには味気ない紙が一枚、貼ってあった。
「当店は、この1月末日をもって閉店いたしました。長らくのご愛顧、感謝いたします。」
…そういや、この古本屋に最後に来たのいつだっけ…。思わず手の力が緩む。段ボール箱が落ちる。箱が破れて参考書の山が足元に積みあがる。参考書の作られた時代を考える前に、現代における本の価値を考えるべきだったのかもしれない。今や電子書籍でなんでも読める時代だ。古本屋もこれからは廃れていくのかもしれない。
俺の頭が、古かったのか…
例えば、とある街角で 有宮旭 @larjis
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