『本屋にお客を呼び込もうZE☆企画』

ハルカ

~最初に戻る~

 SF作家は頭を抱えた。

 まったくアイデアが浮かばないのだ。

 彼が悩んでいるあいだにも、進行役の書店員がテキパキと話を進めてゆく。


「皆様、お忙しい中お時間をいただきありがとうございます。本日は『本屋にお客を呼び込もうZE☆企画』と題しまして、さまざまなジャンルの作家の方々にお集まりいただき、貴重なご意見をうかがいたいと思います」


 小さな会議室がわっと盛り上がる。


「ではさっそく始めましょう。アイデアをお持ちの方は挙手願います。――おっと、ミステリー作家さん早かった」

「謎解きゲームなどいかがですかな? 店内のいたるところにヒントを隠すのです。売り物ではないダミーの本を置いてヒントを忍ばせるのもよいかと」

「おっ、ワクワクしますね。他の方はいかがでしょう? 恋愛小説家さん。お願いします」

「小説合コンすべきですわ!」

「小説合コンとは?」

「好きな小説について語る合コンですの。本の好みが合う同士でカップルが誕生するかも。素敵だわ〜」

「出会いの場を提供するわけですね。さて他の方は。はい。歴史作家さん、どうぞ」

「自分の生まれた年の本を取り寄せる企画はどうかね。また、古い時代の書物を再現する体験学習もよいのではないか」

「勉強になりそうです。活版印刷の体験とかいいですね」

「私も意見いいですかぁ?」

「はい、ファンタジー作家さん」

「ファンタジー世界風のコスプレをして写真撮影なんてどうかなぁ?」

「店内に簡単なセットを作ると本格的になりそうですね。ギルド風とか。さて、ほぼ意見が出そろいましたかね。あとは……」


 全員の視線がSF作家に集まる。

 SF作家は身を縮めた。考えれば考えるほど頭が真っ白になる。

 ここはアレを使うしかない。知り合いの科学者からもらった秘密の道具だ。使えば少しは時間が稼げるはず。えいっ。


 追い詰められたSF作家は、「時間を3分間巻き戻す時計」のボタンを押した。

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『本屋にお客を呼び込もうZE☆企画』 ハルカ @haruka_s

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