盗賊の拠点に突入
昨日、盗賊の拠点であるゲートウェイポータルで生じた事象は、盗賊側からすれば〝討ち入り〟。盗賊が、いつ報復に来てもおかしくない。
以前よりも、危険な状況に至っている可能性の否定も出来ない――。
武具屋に報復の矛先を向けられないようにするには、俺が盗賊の拠点に
とはいえ、俺が盗賊の拠点に居る間は、武具屋が攻撃される可能性は低いだろう。
「任せる。私は、野暮用で出掛ける。何かあれば念じてくれ」
盗賊の拠点へ繋がる扉の前。どんな顔をして入るべきか――考えるのを辞め、扉を開ける。
そこには、廊下は無い。外観通りの広さで何も無い空間があるだけ。
盗賊側からしてみれば、数時間前、この扉から招かれざる者が入ってきたのだ。出入口を塞ごうと考えるのは、自然な成り行き。
このまま繋がりを絶っておけば、盗賊が再訪する恐れは無い――本当にそうだろうか。
〝こちらからは〟繋げないだけ。対して盗賊側には、繋ぎたければいつでも繋げられる
これでは、町が盗賊に襲撃されるリスクは、全く低減していないどころか、むしろ増している。
リーダー格のおっさんは始末した。では、出入口を塞ぐよう指示したのは、誰なのか――司令塔が残存していることを意味する。こちらからの攻撃を回避し、戦力を蓄える目的で出入口を遮断したのならば、見過ごせない。
盗賊側に、主導権を握らせておくことは許容出来ない。
まずすべきことは、不公平の払拭。
こちらからは盗賊の拠点に繋げない。この前提を変えなければならない。どうすれば、この扉を再び盗賊の拠点に繋げられるか――。
扉を開けた状態で、ドア枠内の空間に対して命じる。
《私が前回通過した
想定した通り。扉の向こう側の空間が、盗賊の拠点に変わった。
扉を通過。廊下を左に進むと、幽閉されていた部屋がある。用があるのは、右方向。
廊下を歩いていると、最初に遭遇した衛兵に取り押さえられた。
俺に服従している者を対象に、念を飛ばす。
《我が
別の衛兵が走って来た。その衛兵は血相を変え、俺を取り押さえている衛兵を引き剥がす。
「申し訳ありません! 命をもって償わせ……」
衛兵は交代勤務。俺との契約未締結者が存在するのは、
「償いは不要だ」
昨日、念仏
衛兵は、眼鏡女には目もくれない。まるでそこに存在していないかのような振る舞い。衛兵の態度から察すると、眼鏡女の職務は、衛兵の監視といったところだろう。
俺が知りたい情報は、口頭で話せる内容ではない。会話内容が司令塔に伝わり、情報源である衛兵を消されてしまっては困る。
不特定多数への視覚操作、空間操作、洗脳――今認識出来ているだけでも、これだけの特殊技能が使われている。おそらく、これらは沢山ある中の一部。他にもあると警戒しておくべきだろう。
ここから先の会話は、
《ここにあった出入口を塞いだのは誰だ? 念じて答えよ》
《〝キャトル様〟です》
衛兵は、躊躇なくあっさりと吐露した。
どうすれば吐いてくれるか、頭を悩ませていたから拍子抜けする。
《その者に会わせろ》
《はい! 付いて来てください》
もやっとする――。
昨日、衛兵が『女人禁制』と言っていた。いったい、何の性別を制限しているのだろうか。
ここは剣闘士の房。剣闘士の性別を男性に限定すれば、慣習を設けるまでもなく、房内に男性のみが存在する環境の構築は可能。
昨日、俺は女性だから
部外者は、性別を問わず捕捉すべきもの。男性の部外者ならば、居ても構わないなんておかしな制度を設けるはずがない。となると、制限対象は、職員や関係者ということになる。
眼鏡女は、すれ違う別の衛兵にも止められる事は無かった。自らを監視している者に、敢えて関わることは無いと言われれば、それまでのこと。だけど、女人禁制の場所に、敢えて女性を配していることには違和感を覚える。
前を歩いている衛兵が、念を飛ばしてきた。
《もし隠し事をすれば、私は殺されますか?》
伝えることを躊躇う情報があるのだろうか。重要な情報かもしれないから、話させたい。
《わかっていて、聞いたのだろ?》
《昨夜、ボスを運び出す際、
《うむ》
《〝サンク様〟のように洗脳してこないので、初めは『今殺そう』、『放置して死なせよう』という意見が飛び交いました……私も『拘束し拷問したい』と願望を言いました》
《んっ……》
《しかし、皆すぐに沈黙しました。歯向かえば殺される、何もしなければ殺される、いつ目覚めるかわからないという状況下に置かれている……皆、頭が真っ白になり、死を覚悟しました……私は、目の前に意識が無い美女が居るのに、誰も手を出さない……馬鹿なのか。誰も手を出さないのなら……とタイミングを見計らっていました》
この衛兵がヤバイ奴である事を確信した――が、グッと
《サンクとは、どんな奴だ?
おそらく、サンクが親玉。俺が倒さなければならない相手。
《
《洗脳されている間の記憶は、残っているのか?》
《はい。反抗出来ないだけで、感情もありました》
答えたところで、衛兵が立ち止まる。
《着きました。この部屋にキャトル様が居ます》
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