奴隷が女神を乗っ取った件
はゆ
哀れな婆と犬の糞
「
誰の声や? どうやら寝落ちしとったようや。
バシャッ!! 突然、液体を掛けられる。
「つめてっ! 何てことするんや」
水が飛んできた方向を睨みつける。そこには、小さいおっさんが、バケツを持って突っ立っている。このおっさんと面識は無い。
「お前は誰や!?」
視界に収めているものに、何やら違和感を感じる。
周囲を見渡す――今俺が居るのは、初めて見る小汚い部屋。
「
おっさんが俺に何かを言った。外国語のようで、どんな意味かさっぱりわからない。
強烈過ぎるアウェイ感。こんなものが、現実であるはずがない。俺の夢の中なのに、謎の
「
相手を
寝起き時に言われた『
突然罵倒され、心地良い眠りを邪魔されたのだ。こちらが言葉を選んでやる必要は無い。
「
おっさんが扉の外に向かって、大声で叫んでから数十秒経過。
六畳程しかない小さな部屋の中に、おっさんが二人追加投入され、むさ苦しさが増す。
職務上、普段から嫌という程おっさんの相手をしている。夢の中でまで、関わりたくない。
これは俺の夢。夢の中なら
どうせ言葉は通じない。思い付く限りの
取り押さえられた状態で、五分程経過。
突然、ツンとする刺激臭が鼻をつく。原因を探ろうと周囲を見回し、視界に捉えたのは
刺激臭を振り撒きながら、念仏を唱えるように、ぶつぶつと呟き続ける
こういう輩は、
だが、これは俺の夢の中。俺の願望を叶えるため、具現化したに違いない。
《言葉が通じるようにしろ》
偽物だとは思いつつも、願望を念じてみた。
応答するかのようなタイミングで、頭の中で声が聞こえる。
《何を
《〝名前〟をくれてやる》
床の水に反射した顔は、俺の顔ではなかった。つまり、
《かしこまりました。願いを叶えましょう》
声の
《君の名は?》
《
ご愁傷様。
「呪いは解けたかの?」
「頭の中に声が聞こえてきた。で、
ガタガタと震える
「お主……何という事をしてくれたんじゃ!!」
「ふむふむ。俺が話す言葉も
いつまでも、念仏
「ここにはもう用は無い。それじゃあな」
ここはどんな世界なのだろうか――。
期待に胸を膨らませ、部屋から出ようとしたところを、おっさんズに取り押さえられ、怒鳴られる。
「奴隷が勝手に出るな! 言われたことだけしていろ」
その
「お前らこそ奴隷だろ。いや、それ以下だな。言われたことに従うだけの、無能な
「
「
そんなことはさておき、新たに気になることが出てきた。俺の呼称が『
「おい、
「
どういう事だ!?
とりあえず、先程と同様に願ってみる。
《
数秒後、頭の中で声が聞こえる。
《それは……》
待たされた数秒間は、
《
《ゔー……かしこまり……ました》
《よろしい。また呼ぶ》
どうやら
アバターは、現実世界と違う姿の方が楽しめる。
さあ、
胸元を見ると膨らみがある。そして、あるべき膨らみが無い。性別と容姿が変わっているのに、おっさんズに驚いている様子は無い――やはり、
「出掛けるから出口を教えろ」
「ん? あぁ……」
出掛けていいのかよ。おっさんズが俺の後ろを歩き、出口まで誘導する。尻を触ってくる手が
おっさんズとは、
心の中で
《おい、聞こえるか?》
《何でしょうか?》
《俺の事を呼んでみろ》
《ご……
《そうか。定番の設定だな。名付けた者が主人となるのだろう?》
《……
《そんな重要な事を主人に隠すとは、良い
《それだけは、ご勘弁を!》
《命令だ》
しかし音沙汰が無い――能力を失ったため、応答出来なくなったのならば仕方ない。
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