モヤモヤ男子高校生のひとりごと

牧村 美波

第1話

あー、昨日のオレを殴りてぇ。


何が「え?まだ紙の本なんて読んでるの?わざわざ本屋に行くなんて人生の半分損してない?」だ。


オレが損してるんだわ、今。

只今、絶賛大損中。


教室でカッコつけて電子書籍派を気取ったばかりに、ハルカ達が本屋に行く話の流れに乗り損ねたじゃないか。


サキは分かる。ハルカと親友だから当然だ。


で、お前だよお前。なんで悠太が行くんだよ。

「僕も行こうかな。」じゃねぇよ。


お前も行く?みたいにフォローしてくれるのかな?って思ったら、そこから今日の放課後までこれと言った話もなくて、正門前でバイバイ。


「じゃ、僕達こっちだから。」って駅まですら一緒に行けないのかよ。


ガッカリしてたら悠太が耳打ちしてきて「ハルカが好きな作家はヒガシノアヤらしいよ?」ってすごい良いこと言ったみたいなドヤ顔で去って行ったけど、オレが求めてるのソレじゃない。


まだハルカとはより道なんてしたことないんだぞ。


つーれーてーけー。



…まぁ、ついて行ったさ。

3人にバレないようにコソコソコソコソ。



どうにか店内まで来たものの、どうするって話だよな。


本屋に行くとかナンセンスみたいに言っておいてどのツラさげて声かけたらいいんだ?


本なんて電子書籍でも読まないのに何でこうなった?


気取った結果が本屋でキョドッてるとかカッコわりぃー。


それにふと思ってしまった。


いつの間にか2人きりになって共通の話題で盛り上がってるのを見て、頭がよくてオレよりほんの少しイケメンの悠太のほうが似合ってるよなって。



帰りたい。

でも、このまま帰るのもツライ。


なんて思ってたらサキに見つかって2人にも気づかれてしまった。


「あー…、たまたま通りかかって、ヒガシノアヤの新刊?出てないかな?って。」と付け焼き刃な知識で言い訳してみたらトオノレイ(東野礼)と読むらしい。

悠太め、ケラケラ笑うな。あとで覚えてろ。


3人が言うにはオレが本を読まなそうだから、なんかオススメの本を1冊ずつ探そうって話になっていたらしい。


ハルカと悠太の共通の話題はオレだったのか。

本を読まないこともとっくにバレてた。


サキのオススメは『谷口くんと星くん』っていう恋愛マンガで、これを機に新しい扉とやらを開いて欲しいとのこと。

よし、その扉は厳重にカギをしておこう。


悠太からは漢字がないから読めるはずだよって『怪盗ニンジャくん』の絵本だった。

やっぱり、あとで覚えてろ。


そして、ハルカからは東野礼のヒット作の探偵モノの小説を渡された。

もし面白かったら、他にもおすすめがあるから一緒に本屋に行こうだってさ。


ああ、本屋サイコー!

神様、紙の本様!


電子書籍派の人って人生の半分以上損してるよね!ねっ?


【完】




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