第5話
その頃、王城では。
「クリストファー・・・お前は自分が何をしたのか分かっておるのか・・・?」
人払いされた王城の一室でクリストファーは、両親、つまり国王陛下と王妃、そして妹のキャサリン王女に挟まれ、叱責を受けていた。両親は、自分の息子に対するものとは思えないほど、侮蔑を込めた視線を向けてきた。
「アレクサンドラほど、王妃の素質を持った令嬢はこの国には居ないのだぞ!王妃教育も大変勤勉で、教育係からも絶賛されている。語学も堪能。十八歳にして、まだ王太子妃候補であるのにも関わらず、既に王妃の公務の一部も担っておる。」
「王太子妃候補というのは、難しい立場で、周りの貴族達が自分の娘を候補に取って替えようと企てることもよくあること。心無い言葉をぶつけられ、傷つく日も少なくはなかったはずだわ。それでもアレクサンドラは王太子妃候補として惜しみ無い努力をしてきたのよ。」
あのアレクサンドラが傷付く訳ないだろうとクリストファーは思ったが、それを表に出すことは許されない。心の内に留めておくことにした。
「それに、王太子の公務もアレクサンドラがほとんど担っていたそうではないか!気付かなかった私達に責任はあるが、お前は一体何を考えておるのだ・・・アレクサンドラが必死で働いている間、お前は王城の外で遊び呆けていた、と何人もの家臣達が証言している。申し開きはあるか!」
実の父親ではあるが威圧感が凄まじく、クリストファーは立っていられなかった。もしここで、アレクサンドラは嬉々として、王太子の公務を行っていた、なんて申し開きしようものなら、この場で殺されかねない。
「・・・マーガレットと会っておりました。」
クリストファーが重たい口を開くと、両親揃って頭を抱えた。
「こんなに愚かに育っていたとは思わなかった。教育係は一体・・・いや、これは私達の責任だ。」
「あれほど貴方に尽くしていたアレクサンドラの何が不満だと言うの!許せないわ・・・。」
「大体、マーガレット嬢は悪い令嬢ではないが、ハミルントン公爵の愛人の娘だろう。公爵の前妻が亡くなった六年前、愛人を後妻として迎えたはずだ。マーガレット嬢は六年前まで平民だったのだぞ。勉強嫌いで、六年経った今でもマナーも教養も全く身に付いておらんと聞く。そんな娘に王妃は務まらん!」
「ですが、私は、マーガレットを愛しているのです!何があっても別れません!」
「・・・もうよい。ここまで話が通じないとは思わなかった。自室で謹慎しておれ。だがここにはいられないと思っておくように。」
頭を下げ、護衛達に連れられ自室に戻る。流石に両親にここまで絶望されると胸が痛い。やっと息を吐くことができ、天を仰いだ。ああ、ここまで彼女の予想通りなのかと。
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