激重君と激重ちゃん

@tatumito

同情なら付き合わないで、

「ねぇあんた

「え?」

何気なくさらっと言われたこの一言。

「いやさ、そんなに重いのによく振られないなって思って」

「あぁ、まぁね」

私は笑顔を作るように頑張ってそう言った。

だけどたぶんうまく笑えていない。

なんならうまい返しが見つからずよくわからない返答をしてしまった。

「彼氏さんすごいわ」

そう言って目の前の彼女はオレンジジュースをすすった。

私はその言葉にたいしてなにも答えられなかった。

たぶん彼女にしては何気なく始めた会話の話題のひとつだったんだと思う。

だけど

この言葉が帰っているときも私の脳内に根強く残った。

振るとなんとなく悪いやつ担ってしまうから、かわいそうだからと付き合われるのはいやだった。

同情で付き合われるのはもっと嫌だ。

彼が本当は私のことをもう愛していなくてだけど別れを切り出せずにいて付き合っているのも嫌だ。

だったらはやく振って欲しい。

そんな悲しみの雫を一人くらい部屋でながした。

「どしたの?」

その時私の頬には大きく少し冷たい手に包まれ、鼓膜には1番聞きたいようで聞きたくない音が聞こえた。

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