【Beautiful World】

朝詩 久楽

【Beautiful World】

 「此の現し世は美しい」

 そう思ってしまう私が何時も内の何処かに潜んでおります。

 私は狂人なのでありましょうか。将又はたまた、酔狂なもの好きの変人なのでありましょうか。其の答えは私自身でも未だに分かっておりません。恐らく、此の答えが見つかるのは私が年をとり、絶命するとき、生涯を全うして此の世を去る其の刹那の際でありましょう。

 罵詈雑言、憎悪、憎しみ、絶望、狂気、悩み、葛藤、恨み、妬み、辛み、苦しみ、不条理、不平不満、暴力、戦争、等々…以下略。

 こんなもので満ち溢れている此の世が美しい筈ありません。ですが、何と言いましょうか…仮令たとえば、一日の終を知らせる暖かい橙色の夕日を見送る度に、何気の無い平穏な一日を過ごす度に、私は此の現し世を「そう悪いものでもない」「掛け替えが無い程に愛おしい」と思って了うのです。

 天国と地獄の同居した、幻の様にはかなく、朧げな世界。

 何冊かの小説のページを破り、破った紙切れをごっちゃ混ぜにし、其れを無作為に重ね合わせて作った筋の通らぬ小説の様な世界。

 私にとって此の現し世は時々、此れ等の様に見え感じ取れて了うのであります。

 若しかしたら、此の様なものを一言、美しいと言い表すのかも知れません。

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