華月と綾乃といちゃラブと
昼休み、慎司と鈴音は屋上で昼食を食べる事にした。沙希とマリアも示し合わせた訳ではなかったが、屋上に現れる。
「はぁ...。かづちゃんと綾乃さんは今頃京都か...。」沙希は大きな溜息をついた。
「?」マリアはそんな沙希の様子を見てキョトンとしている。
「そんなに落ち込む?」鈴音は沙希に聞く。
「だって、2人っきりでず〜っといるんだよ?いくらかづちゃんが超鈍い男だって、一緒に泊まるんだよ?」沙希は言う。
「綾乃さんと華月くん、いつも家で一緒じゃない。」鈴音は苦笑いする。
「わかってないなぁ。旅の恥はかき捨てって言葉があるの知らないの?」沙希は鈴音に言う。
「華月くんでも?」鈴音は聞く。
「かづちゃんでも、綾乃さんでもよ!」沙希はイライラした感じで言う。
「what's?」マリアは沙希に聞く。沙希は渋々マリアに今の経緯を通訳する。それを聞いたマリアは沙希に向かってNO NO NOと人差し指を振る。
「かづきはmy princeです。そんな事は起きません。」マリアは笑いながら言う。
「甘いわね!マリア!」沙希は強めな口調で言う。マリアはその声にビックリする。
「前から言おうと思ってたんだけど、かづちゃんに助けられて、ホの字になったのはあなただけじゃないのよ!」沙希は言う。
「...ホの字て。」慎司は苦笑いする。
「NO NO NO。想う歴史が違います。」マリアは言う。
「それこそ甘いわ。歴史なら綾乃さんが1番よ。」沙希が言うとマリアは、ハッとする。
「コントみたいね。」鈴音は苦笑いしながら言う。
「...鈴音、アンタ、マリアの事件の時にしんちゃんと随分仲良くなったわよね?かづちゃんから、しんちゃんに乗り替えた訳ね。」沙希は言う。
「わ、わたしは別に...。」鈴音は慌てる。
「その辺にしときなって。」慎司は言う。
「華月達がそれどころじゃないのはわかってるでしょ?」慎司は冷静に言う。
「だって...。」沙希はムクれて見せた。
「ただの品評会だけならまだしも、佐奈子婆ちゃんの墓が荒らされたんだよ。それに、紅蓮ていう刀も盗まれた。今朝の山火事のニュースは見た?あれは紅蓮が使われた可能性が高いんだ。」慎司が言うと3人とも普通に戻る。
「あれ、妖しの仕業なの?」鈴音は聞く。
「あぁ。あそこの山には覚という妖しの一族の集落があったみたいなんだ。」慎司は言う。
「覚って、心を読むとかいう妖しよね?」沙希は言う。
「そう。敵に回すと厄介な妖し。恐らくは敵対していた妖しが紅蓮を使って滅ぼしたんじゃないかと思ってる。」慎司は言う。
「コレですか?」マリアは動画を見せる。今朝のニュース動画だ。
「そうコレ。」慎司は言う。山の全体を上空から映した映像に切り変わると、動画を止める。
「ここ、わかりづらいけど扇状に木が倒れていってるでしょ?コレが紅蓮の威力だと思う。」慎司は言うと皆驚いた。
「コレってかなりの広範囲じゃない?」沙希は言う。
「500メートル位はありそうね。」鈴音も言う。
「射程というコトですか?」マリアは慎司に聞く。
「そういう事。」慎司は頷く。
「集落ごと焼き払ったのね?」沙希は聞く。
「そういう事になる。覚は対時していれば、その思考は読まれてしまう。攻撃はかわされる。だけど、対峙せずにただ暴の力で薙ぎ払ってしまえば、それが可能であるならば...。」
「何もさせずに滅ぼせるって訳ね...。」鈴音は言う。
「ズルいです。」マリアは言う。
「確かに卑怯だわ。借り物の力だし。」沙希はマリアに同意する。
「慎司くん、華月くんと綾乃さんてコレと闘う可能性があるって事だよね?」鈴音は聞く。
「如月家の管理品だからね。取り戻しに行くだろうね。」慎司は言う。
「私達が京都に行くのは明後日...。もどかしいったらありゃしない。」沙希は言う。
「情報収集しているみたいだよ。いきなり戦闘にはならないさ。誰が持ち去ったのかもわからないしね。」慎司は言う。
「西の統治者の管轄って事よね?」沙希は慎司に聞く。
「そう。でも何もわからないのが現状。今朝電話で話した。」慎司は言う。
「そうなんだ?確か、慎司くんと同じ人狼族の人だったよね?」鈴音は聞く。
「そう。」慎司はぶっきら棒に答える。
「何か機嫌悪くなったでしょ?」沙希は慎司に言う。
「うん。あの人の事を思い出したらね。」慎司は右京の事を思い出す。
「シンジ?」マリアは心配そうに慎司を見る。
「あぁ、ゴメンゴメン。」慎司はすぐに笑顔に戻る。
「太陽と呼ばれるしんちゃんを一瞬で不快にさせるなんて、西の統治者ってよっぽどなのね?」沙希は言う。
「一言で言うと、面倒臭いんだよねぇ。」慎司は苦笑いする。
「童話に出てる狼の悪い部分を全て持ってったた様な性格。」慎司は言うと3人は、赤ずきん、3匹のこぶた、7匹の子ヤギ等を思い出す。
「あぁ、小者っぽいね...。」沙希は言う。
「面倒臭そうね...。」鈴音も言う。
「ザンネンでーす...。」マリアまで言う。
「綾乃さんが動いているみたいだから、何かあれば華月から連絡くるでしょ!それからだね。」慎司は嫌な空気を払拭する様に言う。
華月と綾乃は如月家の墓がある行徳寺に到着していた。住職の望月は華月達を見るや否や、華月達に駆け寄り、
「華月様、大変申し訳ございません!」住職の望月は華月に土下座をしながら言う。
「止めてください。頭を上げて下さい。御住職や僧侶の皆様の所為ではないのですから。」華月は言うと望月の身体を起こす。
「ありがたきお言葉。」住職は再度深々とお辞儀する。華月は困った様に微笑む。如月家の墓に着くまで望月は謝り続けた。
「それにしても、思いの外、ヒドいな。」華月は墓石の損傷を見ながら言う。墓石の内側に貼られた呪符を確認するも、目立った劣化は見られなかった。崩れた墓石は損傷し、何か爪痕の様な傷もある。
「何だと思いますか?」華月は綾乃に聞く。
「この爪痕...。慎司様の攻撃した後に似ておりますね。」綾乃は言う。
「確かに。人狼か...。他に可能性のある妖しはどうかな?」華月は綾乃に聞く。
「鬼熊、熊童子、といった所でしょうか?」綾乃は考える様に言う。
「酒呑童子か...。今も生きているのかはわからんがな...。」華月も考える。鬼熊、熊童子は酒呑童子配下の妖しでその名の通り凄まじい怪力を誇る妖しである。
「因みに、昨日は月は出ていましたか?」華月は住職に聞く。
「いいえ。昨日は確か新月であったと思います。」望月は言う。華月は綾乃を見ると、綾乃も頷く。
「人狼の線は消えた...か...。」華月は考え込む。人狼族は新月の時、その力を一切使えない。
「御住職、ありがとうございました。後日、こちらに呪符が届く様に手配しておきます。お手数をお掛けいたしますが、届き次第念の為、呪符は新しい物に全て張り替えて下さい。」華月は言う。
「かしこまりました。」望月は華月と綾乃に頭を下げる。
「宜しくお願いいたします。」華月と綾乃は望月に頭を下げるとその場を後にした。
寺を出た華月は母方の祖母の美代に電話をする。コール音が2回鳴り、聞き覚えのない女性の声で
「はい、水影でございます。」と声がした。
「如月華月です。婆ちゃんをお願いします。」と華月は告げる。
「あ、は、はい。少々お待ち下さい。」女性はそう言うと保留音が鳴り響く。暫くして、
「華月か?佐奈子さんの葬儀以来かの?」美代は電話に出る。
「そうだね、婆ちゃん、いきなりなんだけど頼みがある。」華月は言う。
「何じゃ?」美代は言う。
「京都の行徳寺に新しい呪符を送って欲しいんだ。」
「納骨の際に破れでもしたか?」美代は半年程前に替えたばかりなのを記憶していた。
「いや、実は...。」華月は如月家の墓が荒らされた事、紅蓮が持ち出された事、今は京都にいる事を簡潔に伝えた。
「...わかった。すぐに手配しよう。華月、くれぐれも気をつけての。何かあれば、すぐに連絡するんじゃぞ。」美代は言う。
「わかった。」華月は言う。
「綾乃さんに代わってくれ。」美代は言う。華月は綾乃に電話を渡す。
「もしもし綾乃でございます。」
「綾乃さん、華月に変わった事はないか?」美代は言う。
「今のところ...。」綾乃は言う。
「そうか...。紅蓮と華月に何かあれば、いつでも連絡しておくれ。」美代は言う。
「承知いたしました。」美代も綾乃も電話を切る。綾乃はスマホを華月に返す。
「婆ちゃんは何て?」華月は綾乃に聞く。
「進捗がわかったら連絡を下さいとの事でした。」綾乃は笑顔で言う。
「そっか。一旦宿に行ってから、今日は今後の事を考えよう。」華月は言う。
「はい。」綾乃と華月はタクシーを拾い京都駅に向かう。駅のコインロッカーに預けてあった荷物を引き出し、駅に直結しているホテルでチェックインを済ます。ホテルの部屋に入ると一息つく。
「お茶を淹れますね。」綾乃は言う。
「ありがとう。」華月は少し緊張していた。考えてみれば、綾乃と2人で同じ部屋に泊まるなんて初めての事であった。
「昼食はどういたしますか?」綾乃はお茶を出しながら言う。
「あ、あぁ。綾乃さんは何か食べたい物はありますか?」華月は逆に聞く。
「わたくしは華月様と一緒であれば何でも構いません。」綾乃は微笑みながら言う。
「と、とりあえず外に食べに行きましょう。」華月は言う。変に意識してしまう華月を綾乃は観察していた。
「華月様、もしかすると緊張なさってますか?」綾乃はイタズラな笑みを浮かべながら言う。
「そんな事はない。」華月は綾乃から目線を逸らす。綾乃は華月が緊張している事を確信した。綾乃にイタズラ心が芽生える。
「華月様、2人っきりでございますね。」綾乃は言うと華月の耳は見る見る赤くなる。
「と、とにかく外に行きましょう!」華月は席を立つ。
「お茶は?」綾乃は言う。
「あ。」華月はそう言うと一気にお茶を流し込んだ。
「ふふふっ!」綾乃は笑い出す。
「華月様、そんなに緊張せずとも良いのですよ。」綾乃は笑いながら言う。
「あ、あぁ。いや、緊張などしておらん。」華月は真っ赤な耳をしたまま言う。
「そうでございましたね。まだ夜がございますから。」綾乃は艶っぽい笑みを浮かべる。
「あ、やはり部屋を別々にしてもらおう。」華月は苦し紛れに言う。
「今からでは無理でございますよ。」綾乃は笑う。
「お、俺はビジネスホテルに泊まる。」華月は荷物を纏め始める。
「華月様、わたくしと一緒にいるのがそんなにお嫌なのでございますか?」綾乃は寂しそうに言う。
「い、いや、そう言う訳ではない、だが。」華月は言葉に詰まる。
「ふふっ!新幹線のお返しでございます。わたくしも普段拝見出来ない華月様が見れて嬉しゅうございます。」綾乃は笑う。
「あ...。」華月は黙り込む。もう綾乃を笑うのはやめようと心に誓う華月であった。
「でも...夜が楽しみでございますね❤️」綾乃はわざと言うと、笑いながら俯いた華月の腕を取り、外へと2人で連れ立って行った。
華月と綾乃はうどん屋に入っていた。
「湯葉とか、湯豆腐屋のが良かったですか?」華月は綾乃に聞く。
「わたくしは先程も申し上げました通り、華月様と一緒であれば何でも。」綾乃は微笑む。
「それに、おうどん美味しゅうございます。お出汁がしっかりと効いていて。」綾乃は髪を抑えながらうどんを食べる。その仕草に華月はドキっとした。
「今日は朝も早かったから、本格的に動くのは明日からにしましょう。」華月は綾乃に言う。
「はい。明日は伊集院様の所にご挨拶にお伺いいたしまして、品評会のお話、その後、大江山に行ってみませんか?レンタカーを手配しておきますね。」綾乃は言う。
「大江山...。」華月は呟く。
京都には昔から数多くの妖しの逸話がある。鵺、土蜘蛛、鴉天狗、九尾の狐、酒呑童子もその1人である。中でも大江山は酒呑童子の根城とされており、その昔、源 頼光に倒されたのは有名である。
「酒呑童子、現代に生きているのかはわからんが、紅蓮の手がかりがない以上、行かねばならんか...。」華月は言う。
「はい。活動が確認されているのは、如月と弥生の鬼ですが、まだ転生の確認出来ていない鬼も多数存在すると思います。」綾乃は言う。
「明日はそれで手一杯だな。」華月は言う。
「そうでございますね。」綾乃は答える。
「...つい、そういう話になってしまうな...。」華月は呟く。
「華月様、それは無理もないお話でございます。ですが、今日はもう止めましょう。明日から頑張りましょう!華月様、わたくし行きたい所がございます!」綾乃は華月を励ます様に言う。
「綾乃さん...。うん!行こう!」華月は笑う。
綾乃と華月は京都の観光名所を練り歩く。幼少の頃より如月の鬼として生きてきた華月にとって、またそんな華月の成長をずっと見守ってきた綾乃にとっても、心休まるひとときであった。華月と綾乃は清水寺に来ていた。
「ここの舞台で静御前が舞われたのですね。」綾乃は言う。
「あぁ。義経を想って舞ったのだとか。」華月は舞台からの景色を眺めながら言う。
「ロマンチックですね。」綾乃は微笑む。更に2人は奥に進む。中学生と思われる女子達が、岩と岩の間を目を瞑って行き来している。縁結びの神様が祀られており、成功すれば想いが叶うのだとか。
「わたくしもやってみます。」綾乃は徐に言うと、中学生達の応援を受けながら、向こうの岩に到達する。そのまま元の岩に覚束ない足取りで到達した。
「お姉さん良かったね♪」中学生達は綾乃に声をかけながら華月を見る。華月は照れた様に視線を逸らす。
「はい♪」綾乃は笑う。忍びの技を使えば容易い事だったが、綾乃は敢えて使わなかった。
「お幸せに〜♪」中学生達に見送られ、華月と綾乃はその場を後にした。その後も近場の観光スポットを回りながら、ホテルの部屋に戻ってきた。時刻は夕刻を回っていた。
「お疲れ様でございました。」綾乃は華月に言う。
「綾乃さんも。」華月は笑う。
「まだお食事まで時間がございますので、華月様、どうぞ先にお風呂に行ってきて下さいませ。」綾乃は華月に促す。華月は促されるまま、大浴場へと向かった。湯船に浸かると1日の出来事が思い出される。
(紅蓮を初めて見た時、まるで引き合うように感じたあの感覚は何だ?燻っていた胸の炎が燃え盛る様な感覚だった。一体誰が持ち出したんだろう?酒呑童子、本当に現世に現れているのか?今日1日綾乃さんと色んな話をして、色んな事を思って、綾乃さん...。綾乃さんといると心が落ち着くのは何でだろう?一緒にいる時は胸の炎は静まる。)華月の頭から綾乃の笑顔が離れなかった。
華月は浴衣に着替え自室に戻る。綾乃は電話していた。
「お戻りになられました。」綾乃は微笑みながら、華月を見る。
「くれぐれも戸締りには気をつけて下さいね。華月様に代わりますか?」綾乃はそう言うとスマホを華月に渡す。戸締りという言葉で電話の相手が加奈だと、華月はわかった。
「加奈か?」華月は言う。
「お兄ちゃん?綾乃さんの言う事聞いてる?」加奈は笑いながら言う。
「子供か?俺は。」華月も自然に笑みが溢れる。
「ゴメンゴメン。上手くやってるみたいね。」加奈は言う。
「変わりないか?」華月は聞く。
「うん!大丈夫だよ。」加奈は元気に言う。
「そうか。何かあれば俺を呼べ。」華月は自然に言う。
「うん。お兄ちゃん、女性に恥をかかせちゃダメだよ!」
「どういう意味だ?」
「言葉通りよ。じゃあ、初夜頑張ってね❤️」加奈は電話を切る。
「全く...。」華月は照れた様に綾乃にスマホを返す。綾乃は風呂に行く準備を終えていた。
「わたくしも行って参りますね。あ・な・た❤️キャッ❤️」綾乃はふざけながら部屋を出て行く。華月は何も言えずに赤面したまま部屋に取り残された。暫くして、華月のスマホが鳴る。慎司からだ。
「もしもし。」華月はすぐに出る。
「どうだい?その後?」慎司は聞く。
「まだ、何もしていないぞ。」華月は即答する。
「意外だね。綾乃さんにしては。何かわかるかと思ったのに。」慎司は言う。
「...。あ、あぁ。そっちの話か...。」華月は我に返る。
「どっちの話だよ。あ!華月ってば、綾乃さんと2人っきりだから、悶々としてるんでしょ?沙希ちゃんに言っちゃお♪」慎司は見透かした様に言う。
「...もう好きにしてくれ...。」一日中振り回されて華月には反論する気すらなかった。
「ハハっ。で?どんな感じ?」慎司は改めて聞く。
「墓石についていた爪痕は人狼族のものに似ていた。だが、昨日は新月だろう?」華月は言う。
「だね。右京さんではないのか...。だとすると?」慎司は聞く。
「爪痕から鬼熊、熊童子、そしてバックに酒呑童子が考えられる。」華月は言う。
「転生していればってトコだね。」慎司は華月の思考を見透かした様に言う。
「あぁ、明日大江山に確認に行く。」華月は言う。
「わかった。何かあればまた教えてよ。明後日には行くからさ。」慎司は言う。
「あぁ。待っている。」華月は言う。
「沙希ちゃん達が来る前に、綾乃さんとイチャラブしちゃいなね❤️」慎司は電話を切る。
「全く、どいつもこいつも。」華月は疲れた。暫くして綾乃は風呂から帰って来る。
「お待たせいたしました。」浴衣姿の綾乃を見て、華月はドキっとした。
「そろそろお食事に参りましょう。ココの夕食はビュッフェ形式みたいですよ。」綾乃は華月に言う。
「行きましょう!」華月は足早に入り口に向かう。綾乃はクスクスと笑う。
どうしても綾乃を意識してしまう華月は、ろくに食事が喉を通らなかった。
そんなこんなで食事を終えた華月達は部屋に帰ってきた。
「今日1日お疲れ様でございました。わたくし少し出て参りますね。」綾乃はそう言うと部屋を出て行った。華月はハミガキをして、ベッドに横になる。横を見ると綾乃が休むベッドが目に入る。華月は振りかぶる様に掛け布団を頭まで被った。暫くして、部屋の扉が開く音がする。綾乃の足音は華月のベッドの横まで来て止まる。
「もうお休みになられました?華月様、お腹が減ったらコチラを召し上がって下さいね。」綾乃はビニール袋に入ったおにぎりを華月のベッドの脇の台に置いた。綾乃の足音は洗面台に向かう。華月は起き上がると、ビニール袋の中身を確認した。おにぎりが入っていた。ろくに食事を摂らなかった華月を気遣って、綾乃はわざわざ下のコンビニまで買いに行ってくれたのだった。華月は洗面台に向かう。鏡越しに華月の姿を確認した綾乃は振り向く。と同時に華月に抱きしめられた。
「綾乃さん...。いつもありがとう...。」華月は綾乃を抱きしめたまま想いが込み上げる。綾乃は何も言わずに華月の背に自分の手を回した。
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