judgement night 〜紅蓮編〜
kazn
家元への道
慎司達2年生は、一大イベントである修学旅行の班に分かれながら、自由行動時の行き先を決めていた。同じ班の慎司、華月、鈴音は華月と鈴音の席のある後ろに固まって話合いをしていた。
「高校生にもなって、京都、奈良とはね...。今時、中学生でももっといいトコ行くだろうに。」慎司は中学生の時に行った事があるからか、残念な気持ちになる。
「私は好きだけどなぁ。独特の雰囲気というか、定番だけど間違いないと言うか。」鈴音は言う。
「華月はどう?」慎司は華月に聞く。
「寺院や建造物には感動する。」華月は答える。
「ふーん。乗り気じゃないのは、俺だけか。」慎司は言う。
「どこ回るか決めちゃいましょ!」鈴音は2人に言う。
「慎司と鈴音の行きたい所で組んでくれ。」華月は徐ろに言う。
「ダメよ!サボっちゃ!」鈴音は華月に怒った様に言う。その様子を見ていた慎司は、鈴音が益々、沙希に似てきたなぁと思っていた。
「あ、いや、そんなつもりではないんだが。」華月は言う。
「すまない。実は俺は修学旅行には行かん。」華月は2人に言う。
「えっ⁈」慎司も鈴音も同時に声を出す。
「何で?」鈴音は聞く。
「婆ちゃんが亡くなって、俺は華道道場を継ぐ事にした話は2人にもしたよな?」華月は2人に聞く。2人は頷く。
華月の祖母佐奈子は、7月頭の華道教室を行っている際に、突然倒れた。すぐに病院に運ばれたが、末期のすい臓癌で、身体中の至る所に転移していた。医者からは余命わずかである事が華月達に伝えられた。佐奈子の強い希望で延命措置は取らずに数日が経過した。
「わたしは、よう生きた。わたしがおらんでも、華月も加奈も安心だ。綾乃もおるから安心して逝ける。ありがとうね...。」佐奈子は3人にそう言うと、すーっと眠る様にあの世へと旅立っていった。
華月は華道道場を継ぐ決意は佐奈子が生きている時から出来ていた。だが気負う事は決してなく、華月自身も華道を心から好きであったからその様な決断が出来た。家元となるべく、華月は動き出す。
佐奈子も所属していた日本華道連盟に連絡を取る。会長の伊集院 宗光(いじゅういん むねみつ)は佐奈子の葬儀にも参列していた。その時、華月にこう言った。
(今後この道を進むのならば、いつでも力になるから連絡してくれ。)
特に家元になるのに決まりはないが、その力を連盟員達にも見せて欲しいと伊集院会長に言われた。華月は承諾した。
(定例の品評会が京都で催されるので、そこで発表しようと思う。)会長はそう言った。
「丁度品評会の日程が修学旅行と被っていてな。川原先生には話したんだが。」華月は言う。
「そうなんだ...。お家の事情じゃ、しょうがないよね...,でも向こうで会えたりするかもね。」鈴音は言う。
「そうだな...。」華月は微笑む。
「どうせ予定立てても、向こうで自由行動にしちゃえばわかんないしね。」慎司も言う。
3人共笑った。
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