第168話 南、西砦視察
翌朝、ノーラと共に起き出して朝食を摂り、砦見学のツアーメンバーと兵舎に。
メンバーは、私、第二王子、ヘンドリック(宮廷魔導士)、領主様、見習いさん四人の計八人。
ノーラは、西砦へ物資輸送です。
砦見学ツアーは南砦から西砦に行くのでノーラも一緒に行けばいいんだけど、多分王子様ご来臨を先に知らせに行くんだろうね。物資は多分、ツアーが遅延した場合の昼食食材かな。
南砦は小砦で詰めてる人員も少ない。罠の見学だけだろうから事前通達無しでも見苦しくは無いだろうって判断か。
私は南砦に行くので、見習いさん四人を兵舎で乗せて、ツアーついでに人員入れ替えに行きます。
見習いさんたちは、私が突然体調不良を起こした場合の、予備操縦士(動力?)でもあります。王子様乗ってるから、こういう配慮も要るんだね。
兵舎で大型荷車に乗り、西門を出て森の監視塔へ。
一応ちょこっとだけ荷車浮かしてるので、乗り心地はいいよ。
そしていよいよ監視塔前からフライト。
王子様とヘンドリックは、やはり顔がこわばってるね。
でもごめんね。あんまり低空飛ぶとカラ魔寄って来るから、ちょっと我慢してね。
二十分ほどで南砦に到着し、中にみんなをご案内。
砦に詰めてた見習いさんたち、突然やって来た王子様と領主様にビビって直立不動です。
各施設をさらっと紹介したんだけど、照明の魔道具にヘンドリックがへばり付いた。
真下から天井じっと見つめてるけど、首痛くならない?
いつまでも天井見つめてるヘンドリックを殿下がたしなめ、一階に降りてトラップ部を見学。
すでに夜来た魔獣は討伐されてるので、石英ガラスの向こうには何もいません。
ヘンドリックがしきりに討伐方法を気にするので、魔力デコイで魔獣引き寄せて見習いさんに討伐してもらいました。
殿下とヘンドリックは、感心しきりだった。
クマ魔x1、オオ魔x1、カラ魔x2討伐。
昨日の実績聞いたら、概算で千ネズ魔近かった。
スタンピード前よりは格段に魔獣減ってるけど、西砦よりはまだまだ多そうだね。
ヘンドリック、いきなり破壊矢真似しようとしてるけど、魔力切れになるからやめなさい。まだ西と北の砦見に行くんだから。
「この砦のおかげでペンガス子爵領はスタンピード被害を免れたのか。やはり魔物圏の罠付き砦は効果的だな。しかし飛べねば作れぬのは痛いな」
「そうでもないよ。ここは街道から6kmくらいだから、荷車で街道南下して、近くからなら歩いても来れるよ。穴掘る魔道具作れば、工期は一週間も要らないし」
「近くまでは街道を荷車で移動か。荷車のスピードが速ければ、それだけ作業時間も多く取れる。なるほど、輸送の重要性がよくわかるな」
「レベル6あれば8kmは飛べるから、歩く必要もないよ」
「その上このような砦なら、石材を運ぶ必要もないわけか。輸送力と魔道具、そして罠。この三つがあれば、本当に魔物圏を取り返せてしまう。昨日のヒナタの言、まさにその通りだ」
南砦の見学を終えた私たちは、人員を入れ替えて西砦に。
西砦にはガイがいた。
ちゃんとノーラが事前通達してるから、王子様来てもみんなあたふたしてなかったよ。
ガイが殿下に檻罠の説明をしつつ、カイル君が討伐実演。
「たったこれだけのことで、子供ですら安全に魔獣を討伐できるのか…」
「でもこれは見習いさんまでだよ。森でも簡単に魔物討伐できるようにならなきゃ、スタンピードとか対応できないから」
「つまり、罠は破壊矢を何発も撃てるようにするためのレベルアップ用という位置付けか」
「そうそう。レベル上がったら動体視力や力も上がるから、魔人にも対応できるようになるの」
「魔人だと!? 何人もの熟練兵が、死を覚悟して挑む強さだぞ!?」
「魔人一人なら見習いさん四人で充分だよ。やってみようか?」
自主的に訓練始めてた見習いさん呼んで、魔人ごっこ披露した。
…くそう、二分もたなかったよ。
見習いさんたち、レベル上がってる上に訓練で連携強化されてるから、もう魔人のスペックじゃ太刀打ちできないよ。
見習いさんたちは、殿下に一礼して訓練に戻って行った。
「たった四人の見習いが、数分とせずに魔人を討伐するだと!?」
「あれ? 前回会った時、私魔人討伐してるって言ったよね?」
「それはヒナタがだからこそできるのだと認識していた。まさか見習い四人が無傷で討伐できるなど、思いもせんぞ!」
「私、五歳の幼女だよ。私にできるなら、大抵の人にもできるでしょ? ガイもできるよね?」
「そうだな。殿下、魔人って魔力制御をある程度鍛えたレベル7くらいの兵の強さです。しかも武器も防具も使わないんで、勝つのはそんなに難しくありません」
「…魔人に勝つのが、難しくない?」
「例のあの穴倉、もう一匹もいませんよ」
「まさか!? あれは何年もかけてゆっくり減らしていく計画ではないのか!?」
「二日で終わりました」
「……に、二千を二日だと?」
「まあヒナタに罠作ってもらってズルはしましたが、途中で罠が壊れて戦いになりました。ですが、魔人の攻撃を流す技と破壊矢が連続で撃てたので、無傷で済みました」
「…嘘ではないのだろうが、信じられんぞ」
「ある程度のレベルと魔力制御力があれば、そこまでになれるんです。事実宰相の兵二百が逃げまどった魔獣の群れを、うちの兵と見習い三十人で討伐してます。こちらのけが人は、かすり傷が二人でした」
「やはり報告書だけでは分からんことも多いな。今回こちらに来て正解だった。二百の兵が逃げまどう魔獣をたった三十で殲滅だと。それでは兵の強さが最低でも六倍以上ということではないか」
「はい。兵が強くなりすぎて悩むことがあるとは、つい数か月前までは思いもしませんでした」
「ああ、それは統率が難しいかもしれんな。だが、贅沢な悩みだ」
西砦も視察が終わり、一行にガイを加えて一旦町に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます