第61話 穴ぐら生活と初おにぎり

朝、なのか?

砦の武器庫は、朝になるとドアの隙間から光が差し込んでたから朝だと分かったんだけど、ここってほとんど光が差し込まない地下室。

しかも魔獣の侵入防止に出入口に石材積んじゃってるから、室内は日中でも真っ暗。

そして時計も無い。

…面倒だけど、積み石どかせて朝かどうか確認しに行くか。


夜が白々と明け始めてた。

ちょっと早いけど、砦経由で監視塔行くから、さっさと出るか。


飛び立ったら、また幻想的な風景が広がってた。

朝霧から突き出した何本もの大きな岩の柱。しかもその上には木が茂ってる。

私が自宅建築場所に選んだ石柱は頂上が林になってるけど、他の石柱は数本木が生えてるかはげ山になってる。

多分雨による土砂の流出で、上の土が無くなっちゃってるんだろうね。

うちの石柱って、頂上が盆地状なのかな?

だとすると水はけ悪いかも。

おうちできたら、庭予定地の地盤調査もした方がいいかな。


いろいろ考えながら砦到着。

ガイに朝の挨拶したけど、昨晩は何もなかったみたい。よかった。

今晩からは人員も増えるし、安心だよね。


挨拶もそこそこに、日報預かって荷車で監視塔に向けてフライト。

日報配達して、ちゃんと人員も運んでくるからね。


監視塔に着いたら、もう物資と人員が待ってた。

朝の挨拶だけして、監視塔の中の兵士さんに報告書渡した。


ついでに面格子、いっぱい注文したよ。

おうち、デザイン優先したから結構窓が多いんだよ。

頂上まではカラ魔来ないかもしれないけど、『かもしれない』で防御おろそかにはできないからね。


今日砦に運ぶのは知らない二人だったので、改めて挨拶しといた。

あ、不安そうな顔。

幼女が荷車で空飛ぶって、信じられないのかな。


昨日みたいに監視塔前で朝食摂るのかと思ったら、今日は包みを渡された。

そっか、みんなは朝食済ませてたのか。

ではさっさとお仕事済ませて、現場に帰ろう。


最初はゆっくり飛んだのに、荷台の二人は無言で床見てたよ。

しばらくしても慣れた様子が無かったので、怖い時間を短くしてあげようとスピード上げた。


砦に到着したら、妙にぎこちない動きで荷台から降りてた。

身体に力入れすぎて、筋肉固まったのかな?


ガイ宛のお手紙預かったので、読み終わるまで待つことにした。

緊急用件とかあったら、私いないとガイは監視塔までは飛べないからね。

ただ待つのも暇だったので、転がしたままの丸太に座って朝食食べた。


こっちが朝食用って渡された包み開けてびっくり。

お!に!ぎ!り!だ!!

お米あったのかよ! 早く言ってよ!!


一人感動して騒いでたら、ガイが教えてくれた。

南の領でお米作ってるって。

手がべたつくから、フォークで食べるんだって。


海苔巻いてないからべたつきやすいけど、フォークは邪道! 許せん!!

座ってる丸太からお箸作って食べたら、器用だと感心された。

よく考えたら、おにぎりにお箸もちょっと邪道な気がする。

でもフォークよりはいいよ!


中の具が焼肉と焼き鳥だったのはちょっと微妙だけど、久々のご飯に感動した。

結構大きなおにぎり二つを食べきって、他の包みも開けてみた。


……30cm級のバゲットサンドだった。ぐすん。


ちょっと打ちひしがれながら帰りました。

このやるせない気持ちは、おうちの屋根張って晴らすんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る