第57話 ノーラの現状改善計画

帰り道(道?)、ガイがカレンに、ノーラ付きメイドとしての勧誘をしてた。

ノーラのご両親がノーラの移住の話を了承したとしても、即座に移住とはならないだろう。だから、信頼できるカレンに、ノーラに付いてあげて欲しいと頼んでた。

でも、下手をすればずっと領都暮らしなわけで、カレンが答えを迷ってる間に、ノーラが反対したの。


びっくりして理由を聞いたら、ノーラは話しにくそうにしてたけど、あの駄メイド、妾の一族だと分かった。

だから駄メイドはノーラの専属になっても文句を言われなかったが、カレンが専属になったら嫌がらせされるから来ちゃダメだって。


カレンに傍に居て欲しいだろうに、自分がされても我慢してることを、カレンがされるのは嫌だからと反対する。

ノーラは一体どれだけのことを我慢して来たんだろう。


ノーラ自身は気づいてないけど、あの駄メイドは妾がノーラを洗脳するための尖兵の可能性も出てきた。


ノーラ自身は何もできないから、駄メイドいないと生活できないと思わせる。そしてノーラは駄メイドに逆らえなくなり、その駄メイドに妾が指示を出す。


うわ、嫌な考え出て来ちゃったよ。

思わず顔しかめて後ろ向いたら、ガイが虚空を睨みつけてた。

ああ、ガイもその可能性に気付いちゃったんだね。

単なる想像だから違ってるかもしれないけど、私はそんな嫌な可能性がある場所にノーラを返したくないぞ。


「ガイ、今回の予定って、何日くらいのつもりだったの?」

「…あ? 悪い、聞いてなかった」


うわ、怒りで聴覚おろそかになってたな。


「だから、ノーラはいつまでこっちにいられるのかってこと」

「いつまでって、今から帰るんじゃ…」

「予定目いっぱいまで町にいて、その間にガイが領主様に手紙出して、ノーラのおかれてた状況説明するとかできない?」

「……できる。手紙じゃなくて直に話せる。内密の話だが、今後の商取引の関税と魔物圏の拡大防止の会議があるんだ。魔物被害の現状視察を兼ねて、この町でな。ノーラのレベルアップが遅れてたら、一緒に帰ってもらう話も出てた」

「こちらの出席者は?」

「親父とディートリヒ兄貴、そして次期領主様」

「それなら直接親御さんに、邪魔の入らない環境で話せるね」

「やる。親父や執事もあのメイドに腹立ててたから、巻き込んで味方してもらう」

「うん、お願い」

「お父様が来るの?」

「内緒だけどな。それと、叔母上はこの町出身だろ。だから慰問のために一緒に来るぞ」

「じゃあ、それまで帰らなくていい?」

「おう。カレンに町を案内してもらって、うまいもん一緒に食え」

「うわ、私って領都も歩かせてもらえないのに、そんなことしていいの?」

「いいに決まってる。景色が見えなくたって、知らない音やにおいもいっぱいあるだろう。この町、食の宝庫って言われてるから、特ににおいは、嗅ぐと腹減って来るぞ」

「うわ~、どんなにおいなんだろう? 楽しみ!」

「おう、楽しめ。カレン、そういうことだから、ノーラのこと、しばらく頼んでいいか?」

「分かりました。私も楽しみです」


おお、いい具合に話纏まったな。

だけどさガイ、慰問は慰問先でみんなに会うんだから当然公式行事。

なんで会議は内密にするのよ?


「ガイ、会議が内密の理由って、聞いてもいいの?」

「…すまん。話せねぇ」

「あ、ごめん。私は会議の話なんか聞かなかった。これでいい?」

「…助かる」


うーん、気になる。だけど聞いちゃダメなやつなんだ。

私って、気になることがあると、ついつい考えちゃうんだよなぁ。

ガイが言わないってことは知っちゃいけないってことなんだから、これ以上考えないようにしなくちゃ。


監視塔に着いてちょっと休憩してたら、兵団長のディートリヒさんが部下の人と一緒に馬でやって来た。


会うの二回目だけど、何とか名前、覚えてたよ。

ガイとディートリヒ(さん付けはやめろと言われた)がしばらく話し込んでたから、私は兵士見習いたちに頼まれて、魔獣ごっこしてた。


しばらくしたら、私、また依頼されてしまった。

砦への人員と物資の輸送。

いよいよ本格的に砦を再利用するみたいで、熟練兵と兵士見習いのペアを、砦に送って欲しいそうだ。

毎日二人と物資を、一週間続けて砦に運んで欲しいんだって。

帰りはどうするのかと思ったら、一か月ほど砦に籠って見習いのレベル上げするらしい。

そっか、私の砦生活も、もう終わりか。


朝起きてすぐに監視塔に来て朝食。

そして昼食と夕食貰って荷車で砦にGO.。

その後は翌朝まで自由だって。


うん。そろそろおうち作り再開したかったから、ちょうどいいかも。

賃金出る上に食事付きも魅力だ。

昼食と夕食はテイクアウトできるものだから、がっつり現場で建築作業できるな。

よし、受けよう。


ガイは砦の臨時責任者に任命されたから、明日砦にとんぼ返りだって。

ノーラの件は今日中に根回しするから、会gごほんごほん。例の日だけ送り迎えしてくれって。

そだね、しっかり根回ししておいてね。


なんだかんだしてたら結局お昼になっちゃって、お外でみんなで食事した。

今日の昼食は、洋風焼きそばパン? いやこれ、ソーセージナポリタンパンだな。

切れ込み入れたパンにナポリタンを敷き、長いソーセージで蓋みたいにしてある。バゲットサイズで。

半分だけ食べて、残りは夕食だな。


建築現場は数日放置しちゃってるので、みんなと別れて現場に直行した。

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