第25話 初めての対話1/4
とりあえず塔の近くまでゆっくり飛んで、監視塔の上の人に手を振って塔の前に着陸した。
あ、兵士さんっぽい人が三人、槍持って出てきた。
「こんにちわー。ここって何領?」
「…」
く、笑顔でフレンドリーに話しかけたのに、無言で槍構えられてる。
「あれ? 言葉通じない? 私は幼女だぞ!」
場を和ませようと、冗談っぽく胸張ってえばってみた。
「みりゃ分かるわ!」
おお、突っ込み来た。よかった。
「あ、言葉通じてた。よかった。ねえお兄さん、ここって何領か分かる?」
「当たり前だ! ここはペンガス子爵領だ。何しに来た!? お前は何者だ!?」
うーん、受け答えはしてくれるけど、警戒は解けてないね。槍も構えたままだし。
「ペンガス子爵領…知らないとこだな。あ、私はヒナタ。魔物の森に住んでるんだけど、ちょっと飛びすぎたみたいで迷っちゃったの」
「魔物の森に住むだと!? お前は魔人か!?」
「いや、魔人なんか顔色紫で真っ赤な目してるし、魔核もあるじゃん。私、そんなの無いよ。なにより魔人は言葉しゃべれないじゃん!」
前髪上げて額を見せた。
「お、おう。…確かにそうだが、お前飛んで来ただろうが?」
あ、ちょっとだけ警戒緩んだ? トーンダウンしたよ。
「うん、私、魔物をいっぱい狩ってたら飛べるようになったんだぁ。えへへ、すごいでしょ」
ちょっとだけ浮いて、左右にふらふら。
「……人って飛べるのか?」
「うん。魔物いっぱい狩って、練習すればね。でも喜んで飛んでたら、迷子になっちゃったの」
「…そうなのか。親は?」
「いないよ。何年か前に死んじゃって、それからはずっと一人だよ」
「すまん、悪いことを聞いた」
この人大分お人よしかも。槍を下ろしただけじゃなくて、頭まで下げてる。
「ううん。勉強しろって言われないから、結構楽だよ?」
「いや、気持ちは分かるが、勉強はした方がいいだろ」
「えー、読み書き覚えても、森の中じゃ意味無いよ」
「それはまあ…。あ、いやそうじゃなくてだな。嬢ちゃんは何しに来たんだ? これからどうするんだ?」
「ちょっと休憩したら自分ち探しに戻るよ。でも塔に人が見えたから、おしゃべりしたくて来たの」
「そうか…。ほんとに魔の森で一人で住んでるのか?」
「うん。家だと物に話しかけても返事してくれないもん。久しぶりに人見たから、うれしくなったの。お兄さん、私と話してくれてありがとう」
本当はテレビに突っ込み入れてたんだけどね。
「ああ、別に構わん。おい、お前たちは警戒解いて戻っていいぞ」
お、警戒解いてくれた。
ちょっと同情誘うような言い方してお兄さんの良心に付け込んじゃってる気はするけど、なんとか第一関門突破だね。
でも、ずっとにこにこしてるの、結構しんどいな。
表情筋が引きつりそうだよ。
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