いじめられっこのボクが土属性魔法『四つん這い』で魔法学園を征服する話。
@tamago-x-gohan
第1話 『転校生』
先生「と、いうのが100年前……こら!そこ!転校生のリョーマ君!?……ちゃんと、聞いている!?」
持っていた教科書からボ~っとしている一人の男子生徒に視線を移す。
リョーマ「へ!?あ、すいません!全然、聞こえませんでした――!」
先生「『聞いてない』ではなく『聞こえませんでした』!?先生のせいにするの!?ああ……これだから男子は……学級長のノルンさん、代わりに教えてあげて……」
頭をかかえたスタイルのよい美人教師は、これまたスタイル抜群の学級長ワーキュリー・ノルンを指名する。
ノルン「はい、先生。王国を魔物から守る『ワルキューレ王国魔衛兵団』直営の我が学園『ワルキューレ魔法学園』は選ばれたエリートしか入学できません。200年前、魔王の出現により人間世界が窮地に立たされた時、それまで王国を守っていた男のみで構成されていた王国騎士団では魔物に歯が立たちませんでした。そこで結成されたのが魔法適性の高い女性のみで結成された『ワルキューレ王国魔衛団』。100年前、魔王を倒した八名のワルキューレは『八英傑』と呼ばれ、今なおその子孫は『八大貴族』として国を治めています」
女生徒A「さすが『八大貴族』のひとつ『ワーキュリー家』!私たちとは格が違うわね!」
女生徒B「三年生のノルンのお姉さん『エッダ』様は推薦でワルキューレ王国魔衛団に配属が決まっているらしいわよ!」
女生徒達は重ね重ねノルンを讃える。
ノルン「わかったわね!ただでさえ『男』で魔力が少ないのだから『落ちこぼれアース』を見習って雑用でも覚えなさい!」
ノルンは教科書で顔を隠しているリョーマに向かって激しく
リョーマ「ぐぅ~。……ん?朝か?」
ノルン「寝るな――!!!!」
アース「りょ、リョーマ君!ノルンさんを怒らせたらヤバいよ!転校したてで知らないかも知れないけど、『八大貴族』を怒らせたら学校に居れなくなるよ!」
リョーマ「そうなのか?教えてくれてありがとう!お前、いい奴だな!」
後ろの席の男子生徒に体を向ける。
アース「男子生徒はボクだけだったけど、男は基本、女の子の『奴隷』だから……」
リョーマ「そうなの?あの『ノルン』って子の『奴隷』なら喜んでなるぞ!おっぱい、でけぇ~し!」
ノルン「おっぱ――!?な…な…な…なんですってぇ――!!」
ノルンは真っ赤になりながら胸を抑える。
先生「うるさいわよ!リョーマ君にアース!罰として放課後に教室の掃除をしなさい!!」
アース「えぇ~……今日は田植えの手伝いがあったのに……」
ガッカリと肩を落とす。
リョーマ「じゃ、放課後まで寝るか……。ぐぅ~」
ノルン「だから、寝るな――!!」
ノルンの叫び声はすでにリョーマには届かず、夢の中に旅立つリョーマを睨み付けながら椅子に座った。
先生「ほらっ、授業の続きをしますよ――」
アース「……はぁ」
この物語の『
【放課後】
アース「リョーマ君!起きなよ!掃除をしないと先生に怒られちゃうよ~」
箒を片手に持ちながら、リョーマの肩をゆする。
リョーマ「むにゃむにゃ……もう朝か?」
アース「もう夕方だよ!」
呆れた口調で言葉を返す。
リョーマ「ふわぁ~……しかし、男が奴隷ねぇ~。時代は変わったね~」
せっせと床を箒で掃いている真面目なアースをあくびをしながら眺める。
アース「リョーマ君も手伝ってよ~。元はと言えば、リョーマ君のせいなんだからね~」
リョーマ「ん?確かにそうだな……。じゃ、手伝うか。生活魔法~⬛⬛⬛《クリンリネス》」
リョーマが指を『パチン』と鳴らすと、瞬く間に教室がピカピカに磨き上がった!
アース「え?え?何?どうして……」
アワアワしてわかりやすく戸惑う。
リョーマ「いいリアクション!……そうだ!アース、お前を学園の支配者にしよう!」
突然、アースを指差しわけのわからないことを言う。
アース「えっと……リョーマ君?」
とりあえず、聞き直す。
リョーマ「俺には野望がある――」
何にも聞いてないのに語り出した!
アース「リョーマ君?」
もう一度、聞き直すがリョーマにアースの声は一切届かず、上の空に向かってリョーマは語り続けた……。
リョーマ「俺は今度こそ平和に暮らしたいんだ!100年前に転生した時はやれ魔王を倒せだ!やれワルキューレと結婚しろだ!散々に苦労した!俺は平和に暮らしたいだけなんだ!だが……俺は強すぎる!たぶん、すぐ目立つ!かっこいいし!だから、代わりにアース!お前に目だって学園を支配してもらい、俺は影で平和な生活を満喫する!どうだ?お互いに悪い話じゃないだろ?」
一通り、話して満足したのか、上機嫌でアースの肩に腕をまわす。
アース「ちょっと、何を言ってるの?リョーマ君が魔王を倒したとか、意味がわからないよ!」
リョーマの腕を振り払う。
リョーマ「ん?信じられないか?そうだ!俺のステータス見るか?」
リョーマはアースの目の前にステータスを表示した!
アース「リョーマ君!ステータスなんて個人情報を人に見せちゃ……――!?」
アースはリョーマのステータスに驚愕した。
アース「え?え?レベル999の勇者!?HP99999、MP99999、属性、光・闇・炎・水・氷・土・雷・風……!?」
そこにはデタラメな数値が並んでいた。
リョーマ「どうだ?信じたか?」
アース「どうだって……人のレベルの上限は100だし、属性は一人ひとつが常識だし……信じられないよ!でもステータスの偽装はできないし……王国の魔術師なら『隠蔽』スキルで数値を減らすことはできるけど増やすことは……」
なにやら一人でブツブツ言い出した。
リョーマ「別に信じなくてもいいけど、お前……面白いスキル持ってるな。土属性のレアスキル」
アース「――!?え?え――!?か……『鑑定』……できるの?」
『鑑定』は大聖堂の『聖女』しか使えないと言われるレアスキルだ!それより、誰にも言っていない自分の属性とレアスキルの存在を当てられ驚きを隠せない!
リョーマ「そのスキルがあれば女の子に好き放題言われなくてすむだろ」
アース「ダメだよ!こんなスキル!何の役にも立たないよ!」
確かにボクはレアスキルを持っている。土属性のレアスキル『四つん這い』だ。どんな相手でも四つん這いにすることができる。でも、ただそれだけだ。何の役にも立たない。
そもそも、魔力属性が高い女性しか入ることができないこの学園だって、ボクのユニークスキルのせいで勝手に入学させられちゃうし……。
リョーマ「いや、イケるぜ!俺に任せとけ!」
それだけ言うと、ニヤニヤしながら満足げに教室を出ていった……。
アース「なんだったんだろ……。あ!早く帰って、田んぼを手伝わないと!!おじいちゃんに怒られちゃう!」
アースは急いで帰り支度をすると、足早に教室をあとにした。
【次の日の朝 教室】
『ざわざわざわざわ』
まだ朝のホームルームも始まっていないのに騒がしい。
アース「……はよ……ざい……ます」
教室の後ろのドアから、いつものように誰にも聞こえないであろう小声で『おはようございます』と言いながら教室に入り、まっすぐ自分の席に向かう。
ノルン「やってくれたわね……ポンコツアースの分際で――!!」
下を向いて一直線に向かった自分の机の上に……なぜかノルンが座っていた。
リョーマ「おお――!おはよ――!アース、お前、度胸あるなぁ――!!」
すぐさまアースに近づき肩に手をかけ、ホワイトボードを指差す。
アース「みんな、何を言って――!!?」
ホワイトボードには女の子が男の子に土下座しているヘタクソな絵と『ノルンなんてボクの奴隷だ(アース)』とヘタクソな文字が書かれていた。
ノルン「いい度胸ね!こうなったら決闘よ!!負けたら奴隷でもなんでもなるわ!その代わり、あんたが負けたら退学だからね!!」
怒り心頭のノルンは机の上に立ちながら仁王立ちでアースを見下す。
リョーマ「おっ!青と白の縞々!ご馳走でした」
スカートの中を覗き込むリョーマはお気楽極楽だ!
ノルン「キャ――!!死ね――!!」
ノルンはリョーマの頭をサッカーボールを蹴るかの如く蹴り飛ばした!!
バッカァ――ン!!
リョーマ「ギャァ――!!」
蹴られたリョーマは教室の窓を突き破り、外の茂みに突き刺さる!
リョーマ「ふぅ……ここが一階で助かったぜ!」
なぜか決め顔のリョーマ!
アース「リョーマ君!大丈夫!?」
アースが窓をよじ登り、リョーマにかけよる。
リョーマ「やっぱり、優しいな、お前。気に入った。でも、これでみんなの前でお前の力を認めさせられるな!」
アースに気持ち悪いウインクをする。
アース「やっぱりリョーマ君の仕業だったの!?ノルンは貴族の娘だよ!勝てるわけないよ!」
リョーマ「お前、異世界本って、呼んだことない?」
アース「異世界本?あの別の世界に転生してチートで無双する夢物語?そりゃ、呼んだことあるけど……」
リョーマ「それそれ!クラスのエリートと戦って、底辺の奴が勝っちゃうやつ!あれだよ!あれ!主人公が負けたことないだろ?」
アース「確かにそうだけど、ボクは主人公でも転生者でもないし、そもそも小説の話だし!それにリョーマ君の方が主人公っぽいよ!」
リョーマ「俺は今回、脇役希望だ」
アース「脇役って……」
先生「二人とも!話は聞いたわ!」
割れた窓から顔を出した先生は、茂みで内緒話をするアースとリョーマを怒った顔で見下ろす。
先生「一限目は『ノルン対アースの決闘』とします。みんな、決闘場へ向かうわよ!」
アース「え……え――――!!?」
『決闘』それは由緒正しい風習。
貴族の間で始まった『決闘』は
己の家柄を誇示する最大の晴れ舞台。
故に、両者同意の元に行われる『決闘』は
『八英傑』ワルキューレの名の元に『勝者』の言うことが『是』となる。
たとえ敗者に『死』が訪れようとも……。
リョーマ「よしよし、作戦通り作戦通り……」
ひとりニヤニヤと不気味に笑うリョーマ。
ノルン「アース――!あなたは二度と光の当たる場所を歩くことはないわよ――!!」
生徒達『わぁ――!!』
闘技場へ向かうノルンの雄叫びに歓声が沸き起こる!
アース「え……今日、ボク、死ぬの?」
顔を真っ青にしたアースは持っていた手帳を開き、今日の日付の欄に『命日』と書き込んだ……。
<つづく>
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