第18話
千葉だって、そうだ。
成田闘争で、国に逆らった。
東京にかつてあった空港は、そう、日本には、空の玄関がいくつかあった。
ところが、大東亜戦争に、彼らは、負けたにもかかわらず、こちらが負けた、と言いがかりをつけてきた。
折れたのは、こちら側、長い歴史を持っていたからこそ、ここは折れて、相手に合わせようとした。
それは、死の舞踏、ワルツだった。
円舞を踊る時、どちらか一方が先導しないと、物語が成立しない。
日本舞踊は、たったひとりで成立するが、西洋の踊りは、必ず人の手を借りる。
彼らには、自主独立の精神などない。
だからこそ、バレエでもワルツでもタンゴでも、必ずと言っていいほど、相手役を必要とする。
彼らが、ひとりで踊る事はめったにない。踊るとすれば、主役級だ。
日本のように、大勢で、さぁ、踊ろう、という、柔らかな考えは、風土は日本固有のものである。
ワルツを一人で踊り、後ろ向き、右、左、斜め後ろ、と、足を蹴る。受けて側しか知らない、この両手は、昔は右手を相手の左肩に、左手を相手の腰に当て、クイック、クイック、スロー、スロー、ターン、と踊りを繰り返していた。
相手のいない、孤独な踊りを、幾度となく繰り返す。
悲しみなどない、さみしくなどない、ただ、前を向くしかない。
世に必要のない、この技術は、手に余る。
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