第14話

 残念ながら、俺は、良い息子にはなれなかった。


 がたん、と、音がする。


 ドラマを見ている最中に、おばから電話がかかってきた。


 同い年生まれの俳優が、1週間前に告知をおこなった、1週間とても楽しみにしていたドラマの最中である。


 そのドラマは、配信部屋を見ながら、知らない人と一緒に、まるで同窓会に参加しているみたいに、物語の行方を見守ると言うものであった。


 何が1番こたえるかといえば、ドラマは配信で見返せるかもしれないが、物語の行方を見守ると言う事は、その瞬間にしかできなかったことなのだ。


 名も、なき人々と、知らない人と、ドラマを通じてつなげられることほど面白い事はないと思う。


 おばからの言葉を見る。


 特に用はないけれど、声が聞きたかったんです。


 画面の中では、自分と同い年の俳優が何か語っているところだった。

 見逃したと思った。


 最初から最後まで邪魔が入らずに見られたらよかったのにと思った。

 

 次の日は母だった。


 その日は、1週間また、子供の頃から好きな声優さんの、生で聞く、という、これも、知らない人とのやりとりを、楽しみにしている、ラジオの配信での話である。


 1週間待った、どちらも本当に楽しみにしていたのだ。


 そんな時でも、声を聞かせてくださいとでも言う意味なんだろうか。


 父もそうだった。


 育ての父だけが、俺を男として見てくれた。


 もし、今の俺が男らしいとすれば、育ての父が信じてくれたからだ。


 ボケてなんていないと思うが、おばも母も、育ての父がボケたと言う。


 信じないぞ、俺は、と思うが、

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