第10話

ただ、有名になりたいと言うだけで、有名人が、番組の感想だったり、こういった理由でつぶやいてくださいと言う言うタグを使って、知名度を増やそうと考えた事は何度だってある。


 そんなことをしたところで、知名度が上がるのは、有名人本人だけであって、俺自身が有名になることはない。


 自意識過剰と言われても、過去の栄光だ何だと言われても、振る舞いが、誰かに叩かれないように、恋愛スキャンダルが起きないように、ひたすら息を殺して、生きる日々は続いている。


 何年たっても、あの日の悪夢が消える事は無い。


 私はこう聞いた。


 あんたさぁ、この前、あそこのハンバーガー屋で見かけたよ。

 彼女と一緒だったんだけど、マジでお前、ウケるな。

ずっと鼻噛んでたろ。


 備え付けの、ペーパーナプキンで。


 見てて面白くてさぁ。


 彼女ずっとその話題で盛り上がったよ。


 てか芸能人なんでしょ。


 表舞台に立つ人間がぁ、

そんなふうに人前で鼻噛んでいいの?


 ほんと。


 僕さぁ。


 オーディション落ちたんだよ。


 本当は君が入っていた劇団、入りたくてしかたなかったの。


 親に止められたんだよ。


 世の中、表舞台に立ちたくても立てない人間がいるの。


 自慢しないでよ。

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