インモラル・デス・トゥ・ミー

荒川 麻衣

第1話 

「斬られ役?」


「そ。顔映らないし、ちょうどいいだろ」


 売れない役者を続けて、30年になる。


 手錠を自分で掛けて、ごろん、と横になる。


「ん。いいね。

 肉体が美しいと、着衣の上からでも、  

 そう。


 そそるね」


 ぞっとする。


 子供の頃から感じている、好奇な視線。


 触ることもなく、ただ見られるだけで、ざらり、と、心臓を撫でられるような心持ちがする。


「で」


 耳元に、男の熱い吐息がかかる。


「次は、どうしたい」

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