せっかくだから
最近のレジャーホテルは何でもある。
正直、ラウンドワンからスポーツ要素抜いた奴なんでもあるんじゃない?
メンドイのでつい部屋へ頼んでしまうが、フリードリンクのコーナーもある。
カラオケもゲームもあるし、サウナ付きの部屋もある。
1Fには卓球コーナーあるらしい。なんかもうそれ温泉行けばよくね?
当然、ビデオオンデマンドもある。
俺がリモコンいじくって色々探していると、ちょっと懐かしい和風B級ホラー映画がいっぱいでてきた。
やったぜ。
どれにしようか迷っていると、真希が奇声を上げて飛んできた。
「ふわー」と「ぎゃー」
のあいだみたいな声。
そして俺の手からリモコンをひったくった。
「ななな何しようとしてんの一体、何しようとしてんのよアンタは!」
「何って、映画でも見ようと」
「ホラーはやめて、ずぇったいやめて」
「だってこういうヒマな時じゃないと見ないしさァ」
「じゃあ、ホラー以外にしてよ」
「なんで?」
「だって怖い」
「怖くないとホラーじゃないだろ……」
「なんでわざわざ怖い思いすんのよ」
いかん、水掛け論だ。
「まあちょっと落ち着け。さてはおまえ、ホラー見るのヘタだろ」
「えー、ただ見るのにヘタとか上手とかあんの」
「ある。おまえ怖いシーンとかクライマックスで目ぇつぶったり顔そらしたりしちゃうタイプだろ」
「そりゃそうよ、怖いもん」
「ダメだ。むしろソコをしっかりと見るんだ。画面の端から端までしっかりじっくり見る」
「怖いじゃん」
「違う。所詮は人間の作った映像だからな。めっちゃよく見ると全然こわくない。だって作り物か俳優さんなんだからな」
「マジ?」
「マジ」
彼女はちょっと信じられないみたいだ。
眉をひそめて考え出した。
「むしろよく見たらコレ笑えるじゃん、とかまであるぜ」
「えーでもだって、プロの人が作ってるんだよ。さすがによく見た方が怖くなるようにしっかり出来てるんじゃないの」
「そこがホラーの面白さだワトソン君。『パッと見てすごいコワイ』で目をそらす。ほっとく。どうなると思う」
「わかんない」
即答か。
力説しがいの無いヤツ。
「そうすると人間は連想する生き物だから、ロクに見てないハズの〝コワイ〟を頭がどんどん補完しはじめる。さあどうなる」
彼女は頭上に吹き出しで?の文字が浮かんでるような顔をした。
「やっぱわかんない」
「自分の想像力マックスの怖いところまで、完成しちゃう。だから非常~~にコワイ映像になる。例えばこう、よく見て覚えてるハズじゃないのに、メチャクチャ怖い記憶あるだろ。そうだな、小さいころ見たお地蔵様とか、お墓とか」
「あっ、すごい分かる!」
「そうなっちゃうんだよ。ちなみにどんなの?」
「お母さん殴ってるお父さんの顔」
萎えた。俺は映画をあきらめた。
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