第6話 情報収集
体感で2時間ぐらい周回していたはずだが、時計は起きてから数分しか経過していない。
これはダンジョンに入っている間は時間が経過しない、ということだろうか。
あるいはダンジョン内の時間はかなり加速している、とか。
他の可能性もあるが……。
事実、時間が経過していない。
つまりはまあ、いくらでも悪用が思い浮かぶ。
時間がかかる作業をダンジョンの中でやらせたり、現実の時間がかからないことを利用して無限に残業させたり……。
気力が尽きるまで周回したり、ダンジョンで寝ることで睡眠時間を浮かせたり。
本当にヤバい。
これが複数枚配られていると考えると、持ってるか持ってないかで特権化する。
ちょっとパンを食べながらスマホで調べてみたが……。
数人がダンジョンのカードを拾ってなんだこれと言っているのを見つけた。
そのカードはどれも【初心者の洞窟】だった。
予想通りではある。
でもこれだと何枚ぐらい出現したのかさっぱりわからんな。
特にバズっている感じでもないし。
実際挑戦したら情報を隠そうと思うのはわかる。
利益がすごいもん。
このポーションさばくだけでボロ儲けよ。
やり方は考えないといけないけども。
■■■
結局のところ、この手のものは最前線が最も安全なのである。
一般的な小説で語られるような現代へのダンジョン出現とはいささか形態が違うが、これから社会が大きく変わるのは間違いない。
そうなったときに最も強力な武器となるのはなにか?
情報である。
知識である。
知っているということが最も有利に働く。
他にも、先に進んでいるということはリソースを先に積み上げておけるということでもあり。
ということで【スライムの地底湖】を使う。
どのダンジョンカードもそれほど難易度に差はなさそうだが、これがいいと思った。
最初に出たカードだということもある。
何事も順番は大事だ。
カードが壁に突き刺さり、扉は開く。
その先に広がっているのは、ずいぶんと開けた洞窟。
大きな湖があり、その中央に近い天井には穴が空いていて光が差し込んでいた。
モノリスにあったカードは【鍛冶師】。
そのまま、鍛冶に長けた生産職だろう。
初動でこれ引いたら結構危ないんじゃないかな、と思ったけど試しにセットしてみたらハンマー使えたから案外なんとかなりそうだ。
地底湖には複数のスライムが徘徊していた。
くず餅のような質感で、跳ねる姿も結構重量感がある。
その一方で身体の組織が広がったりしないので、物理攻撃に耐性があるタイプではなさそうだ。
それがぱっと見える範囲で4,5体。
地底湖の水もたまに不自然に動くので水中にもプラスでいるだろう。
《火遁・弾》は結構音が出るから……《風遁・弾》を試すか?
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