第5話 つまり、やらかしたってこと

 ガッカリしている俺に気がついたのか、キョロキョロ、モジモジと身じろぎするララ。そしておもむろに少しだけ前に出た。


「ラ、ララの名において命じます。顕現せよ、マーモット!」


 ララの体が輝きを放つと、先ほどのセルブスと同じようにその光が足下へ集まった。そしてセルブスが召喚したのとまったく同じマーモットが出現した。これがララが召喚したマーモットか。


 そして分かってはいたことなのだが、やはりララは平民の出だったようである。

 この世界で家名があるのは貴族だけなのだ。つまり、セルブスはどこかの貴族出であるということだ。


「ララのマーモットも触ってみてもいい?」

「も、もちろんです。どうぞ、ご自由に触って下さい」


 許可をもらうと、さっそくララの出したマーモットを観察する。隣にセルブスが出したマーモットを並べてみるが、完全に一致している。つまり、どういうことだってばよ。


「セルブス、まったく同じに見えるんだけど?」

「ルーファス王子のおっしゃる通りです。マーモットを召喚すれば、すべて同じ姿で顕現するのですよ」


 なるほど、召喚された魔法生物は個性はないけど皆平等ってわけね。それがいいのか悪いのかは分からないけど、召喚スキルとはそういうものだと思うしかないな。

 それはそうとして、一つ気になることがあった。


「このマーモットは何ができるの?」

「鋭い前歯でかみつき攻撃を行うことができます」

「……それじゃ、バードンは?」

「くちばしでつつくことができます」

「な、なるほど」


 うーん、召喚スキル、大丈夫なのか? これ完全にハズレスキルですよね?

 不幸中の幸いは、召喚スキルを継承する人がほとんどいないということか。仮にもっと多くの人が継承するスキルだったら、”やーい! お前の召喚スキル、ハズレスキル!”とか言われて、からかわれることになっていたに違いない。これはつらい。


「ルーファス王子も練習してみますか? 召喚できるようになるまでに、どのくらいの時間がかかるのかは分かりませんが……」


 セルブスの言葉を聞いて確信した。魔法生物を召喚するのはものすごく難しいのだ。セルブスだって長年、召喚スキルを研究してきたはずなのに、マーモットとバードンの二種類の魔法生物しか呼び出せないからね。ララにいたってはマーモットのみである。


 前途多難。でもなぜだろう? オラワクワクしてきたぞ。だって召喚スキルを使って魔法生物を呼び出すことができれば、気兼ねなくそれをモフることができるのだ。

 先ほど見せてもらった魔法生物図鑑の中には、モフモフの魔法生物の絵もあった。可能性はゼロじゃない。

 ならいつから練習するか。今からでしょ?


「やるよ、セルブス。今すぐに。どうすればいいの?」

「召喚スキルを使い、魔法生物を呼び出すのに必要なのは心の中に思い浮かべる姿です。その姿が正しく形づくられたとき、魔法生物を呼び出すことができるのです」


 なるほど。ようするに魔法生物の細部までイメージすることができれば呼び出せるということだな。ゴリラを呼び出したいのなら、ゴリラのことをよく観察して、絵に描いて、一緒に生活して、友達になる必要があるということだ。


 しかし、ゴリラと違って魔法生物は実在しない。もしかすると、そこが魔法生物を召喚するための難易度を上げているのかもしれないな。

 まずはバードンからにしよう。これは完全に文鳥だし、小さいころに飼っていたことがあるから大丈夫なはずだ。ピーちゃん、あの世で元気にしているかな?


「コホン。ルーファス・エラドリアの名において命じる。顕現せよ、バードン!」


 お、なんかほんの少し、体の中から力が抜けたような気がする。これが魔力なのかな? 初めて魔力を使ったぞ。この世界が剣と魔法の世界だということは知っていたけど、俺にもちゃんと魔法が使えたんだ。まあ、火や水、土、風といった、分かりやすい魔法じゃないけどね。


 俺の体から光が放たれ、左手の手のひらに集まってくる。それは徐々に鳥の形になっていった。そして最後にはかわいらしい文鳥の姿になった。


「キター!」

「ま、まさか、一度で成功するとは!」

「す、すごいです! 私はまだ一度も成功したことがないのに……」

『俺、参上!』


 文鳥が野太い声で名乗りを上げた途端、部屋の中がシンと静まり返った。

 んー、俺の聞き間違いでなければ、”俺、参上!”と言ったように聞こえたんだけど、気のせいだよね?

 確認するべく、手のひらの上の文鳥に首をかしげてみた。


『ピーちゃん、ピーちゃん!』


 今度は甲高い声だ。んんー、おかしいですねー? 確かに小さいころに飼っていた文鳥の名前はピーちゃんだったけど、しゃべらなかったはずだぞ? どういうことなの。魔法生物だからしゃべるのはオッケーなのかな?


「しゃ……」

「シャベッター!」


 セルブスとララが腰を抜かして後ろへ倒れ込んだ。ララのパンツ見えとるがな。

 だがしかし、どうやら魔法生物がしゃべるのはダメだったようである。どうしてしゃべってしまったんだ、ピーちゃん。


 確かにモフモフたちと話したいと思ったことは一度や二度じゃないけどさ。もしかしてそれが原因なのか? 俺が話したいと強くイメージしたから話せるようになってしまったのか?

 へへへ……やっちまったぜ。モフモフへの思いが熱すぎたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る