第3話 少し前に私の周辺で起きた奇妙な事件「神隠し」について語ろうと思います!
────日曜ステーションのスタジオ内にて。
「ショーンKさんも!?」
「そうらしいんですよ。ついこないだあたり突然連絡つかなくなっちゃったらしくて……事務所の人間が自宅に尋ねても居なくて!」
驚く古舘に対して共演している風野舞子アナウンサーはそう言う。
芸能界は生き馬の目を抜くような業界だ。
日々新しい芸能人が現れては消えていく。
人知れず引退したり、事務所に告げず消息不明になる芸能人はチラホラいる。
「現代の神隠しだって。業界の中でひっそり囁かれてるみたいですよ」
朝のニュース番組などの話題には全く挙がらない。冷たい表現だが、業界にとっては日常茶飯事だからだ。
「Kさんで何人目?最近この業界多いよね、突然の失踪。なんなんだろうね」
タレントでありこの番組のコメンテーターでもあるタイミング太田も話に加わる。
「もしかしてこれが今流行りのシンクロニシティってやつぅ!?」
茶化した雰囲気で太田が言う。
太田はよくアイドルグループの歌詞で覚えた事を日常会話に絡めてくる。
しかしこの太田という人間は昔からデリカシーがないうえ、口も臭いため周囲から嫌われていた。
風野アナは手のひらを横にし、鼻と口を抑える。ドブのような臭いに耐えられなくなっているのだ。
古舘も例外無く苦手だった。性格も口臭も。
口呼吸をする古舘。
しかし、デリカシーが無い等は古舘も昔からよく言われていたのだが……。
「行方不明になった事件を笑いにするとは思わなかったですよ!」
すかさず風野アナが咎める。
「真相は彼にしか分かりえない事でしょうが私達にはどうにもできません。とにかく無事を祈って思考を切り替え目の前の仕事に集中しましょう」
もうこれ以上太田に口を開いて欲しくなかったため、古舘は実況風に早口で、この話題を終わらせた。
ショーンKの安否は気になったが、古舘の脳内はニュースや実況、時事ネタなどの報道関連事項で埋め尽くされている。
もうすぐ番組スタートだ。
────そんな仕事第一の古舘伊知郎が神隠しに会うということを本人はおろか、誰も予想していなかったであろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます