貞操観念も価値観も逆転の流行りの漫画の中に転生したけどヒロインのメイン攻略キャラが俺ってどういうこと!?
ALC
第1話作中唯一のモテキャラに転生
現世での俺は平凡なモブキャラだった。
漫画とゲームをこよなく愛するなんでもないただの高校生。
そんなモブの俺にも好きな人はいるというもので…。
ある日、気の迷いから勢いで告白をしてしまう。
「待って…今告白してる?」
その女子生徒は明らかに狼狽しているようで目の前で起きていることが信じられない様子だった。
「はい…」
どうにか答えを返すと相手は嘆息して首を左右に振った。
「ごめんね。異性として見たことないんだよね…」
その答えを聞いて僕は逃げ出すように校舎を後にした。
そこからはとにかく走った。
今すぐにでも自室のベッドに潜って布団にくるまって泣きじゃくりたかった。
その一心でとにかく走りに走った。
家の側の横断歩道は青信号。
ここを渡ればもう家は目の前。
だがしかし、ついていない日は本当に何もかも上手くいかない。
偶然横断歩道に侵入してきた暴走車に撥ねられて僕は絶命するのであった。
目を覚ますと…。
目を覚ますと?
何処か見知った世界に僕は立っている。
現実世界とは明らかに異なる漫画の中のような世界。
漫画の中…。
自分の直感的な感想を信じることにすると自分の容姿を確認するために部屋の鏡の前に立った。
「これは…!」
目の前に映るのは僕の愛読書の漫画のキャラクターだった。
「でも…どうして…」
そんな答えの出ない問いに頭を悩ませる暇もなくただ現実を受け入れることしかできそうもなかった。
僕が転生してしまったキャラクターはジン・ジルクニスという作中一顔面の良い男性。
現実の僕とは似ても似つかわない。
そんなハンサムキャラ。
付け加えるのであれば、この世界は貞操観念も価値観も逆転した世界。
女尊男卑で女性キャラが何事にも優位で強くて積極的。
男性キャラは虐げられているわけではないが…。
有り体に言えば女性キャラの精の捌け口ぐらいの扱いだ。
だがそんな中でも僕のキャラは作中唯一のモテキャラで…。
こんなご都合的な展開はきっと死ぬ前に見ている夢。
もしくは何らかのボーナスステージ。
それぐらいの認識で僕はこの奇跡を簡単に受け入れた。
部屋の扉がノックされて返事をすると使用人らしき人物が来客を知らせた。
「フランシス様がお越しです。客室にお待ちいただいております」
執事らしき好々爺が恭しく頭を下げると僕を客室に案内した。
フランシスとはメインヒロイン級の女性でジン・ジルクニスに好意を持つキャラクターの一人。
「ジン!フランが来てあげたぞ!今日こそデートをしてもらうからな!」
そう言えば、作中でジンはフランシスに全くなびかずにいつも冷静に躱していた。
だけど…。
目の前の超絶美人を前にして断る理由も見当たらず…。
だけど俺は今日からジン・ジルクニスなわけだから。
それでも俺は自分の欲望に従ってしまう。
「わかったよ。何度も積極的に誘ってくれてありがとう。僕もそろそろ根負けだ。楽しませてくれるよね?」
なんてキザったらしい台詞を口にするとフランシスは目の前の現実が信じられないようで自分の頬を抓っていた。
「ジン…これは夢じゃないよな!?」
「現実だよ。僕だってフランのことが嫌いなわけじゃないんだ。ただ自分の身を守るために必要以上に警戒していただけだよ」
「そうか!ならば街に行くとしよう!私がエスコートする!」
そこから僕とフランシスは街に向かいデートをして過ごす。
現実の世界と変わらないのは街の至るところで男があくせく働いているところ。
この世界の男性キャラに生まれたら大変だ。
働いて尚且家事もこなさないといけない。
もちろん結婚している場合は、例え疲れていても女性の夜の相手もしなければならない。
それは嬉しいことなのかもしれないが現実世界と異なるのは問答無用で抱かれないといけないということ。
自分の好きなように女性を抱くことはできず主導権はあくまで女性。
それでも女性に誘われたら行為に移らなければならない。
それが幸せかは人それぞれだが…。
閑話休題。
街でのデートを十分に楽しむと日も暮れてくる。
「ジン…デートに応じてくれたということは…そういうことか?」
フランシスは上目遣いで僕の目を見ていて正直辛抱たまらなかった。
だがここは冷静に、あくまで慎重に…。
「今日は楽しい思い出のまま帰りたいな」
そんな現実世界にいるガードの固い慎重な女性を気取って臭いセリフを口にするとフランシスは軽く微笑んだ。
「本当にお前は…。簡単に落ちたりしないんだな。だがそれが良いところなんだがな」
デートの終わりがやって来るとフランシスは僕を家まで送った。
「じゃあまたな。私以外の誰かのものにもなるんじゃないぞ?」
それに軽く微笑んで応えると僕は家の中に入っていく。
「おかえりなさいませ。ジン様。留守の間、ナターシャ様がお見えになりました。留守を伝えるとまた後日お越しになるとのことでした」
帰宅すると執事の好々爺は伝言を伝えて自室まで共に歩く。
「わかった。ナターシャには待っていると連絡しておいてくれるか?」
「かしこまりました」
執事の好々爺は恭しく頭を下げるとその場を後にするのであった。
今日から僕はこの漫画の中のメイン攻略キャラとして様々な女性キャラと関係を持つ物語は始まろうとしていた。
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