第45話 再挑戦のための準備と調整(2)

 明けて翌日、ダンジョンの入り口の前に立つ俺の装備は昨日から少し変化していた。昨日は、とりあえずリュックとウエストポーチに投げるための物を詰め込んでみました、という感じだった。それが、今日は投擲物ごとに専用のケースを用意して、個別に装備している。


 まず投擲のために着け始めたウエストポーチ。これには砲丸が収納されている。サイズ的にギリギリで、重さ的にもウエストポーチのベルトに結構な負荷をかけているみたいなので、本採用する場合にはウエストポーチを丈夫なものに買い替えるべきかもしれない。あと、背中側に回すように装着しているのでクッション性も欲しい。

 次に硬球。これは審判用のボール袋に入れている。装着場所は投げやすいように腰の右側だ。

 そして、ゴルフボールがラウンド用のゴルフボールケースで、パチンコ玉がスリングショット用のパチンコ玉ケースとなっている。この2つについては完全にけん制用と考えているので腰の左側に装着している。


 残った小石については、当初、工具などを入れる腰袋を考えていたんだが、探してみるとより良さそうなビスカップというものがあったのでそちらを採用した。これは左右の太ももに固定するように装着している。邪魔になるかもと思ったが、腰回りに余裕がなくなってしまったので仕方ない。

 邪魔になるかどうかも含めた確認なので、とりあえず今日はこの位置だ。ダメなようなら、ゴルフボールとパチンコ玉を外してその位置につける形になると思う。


 これらの新しい装備に加え、いつものリュックを背中に背負った格好が今日の装備となる。

 一応、リュックの中にも砲丸、硬球、ゴルフボールの予備が入っている。この3つは使った分は回収するつもりではあるが、回収する余裕がなかったり、破損してしまったときのために用意した。


 で、これらを装備してみた感想なんだが、……まあお世辞にも動きやすいとは言えない。特に腰回りについては正面以外が埋まってしまっているので、装着する位置を微調整しないと動きにくくなってしまいそうだ。

 ただ、ダンジョンのエリア内に入ってステータスが反映されると、かなりマシにはなった。正直、ステータスが反映されるまではあまりの動きにくさに硬球と砲丸、小石だけでいいんじゃないかとも思ったが、今の状態であれば慣れればどうにかなるんじゃないかと思う。






 さて、どうしたものか。

 新しく着けた装備の確認を終え、ダンジョンから出たところで考える。


 とりあえず、装備の確認としては特に大きな問題はなかった。なので、しばらくはこの装備でダンジョンに挑むことになるだろう。

 ただ、小さな問題点としていくつか気になったことはある。


 1つ目は、やはりウエストポーチが安物なので、丈夫なものに買い替えた方が良さそうなことだ。動いているときにウエストポーチが破れるのではないかと不安になってしまった。

 2つ目は、1つ目とやや被るが、投擲物を使用した後のケースの状態だ。未使用の状態であればケースの中に投擲物が詰まっているので安定しているんだが、数が減ると不安定になってしまう。まあ、硬球と砲丸に関しての問題なんだが、この2つのケースについては個別に収納できるように改造したほうがいいのかもしれない。

 ただ、そうした場合に問題になりそうなのが3つ目だ。これはゴルフボールに関してなんだが、戦闘中にすぐに取り出すことができなかった。割としっかりとケースに仕舞われているので、取り出すのに手間取ってしまう。激しく動くことを考えるとある程度固定されているのは歓迎すべきことなんだが、使いたいときに使えないというのはいただけない。まあ、つけていて邪魔になるというほどでもないので、とりあえずゴルフボールは予備としてそのまま装備しておこうと思う。


 で、どうしたものか、という問題に戻るんだが、悩んでいるのは新装備の確認が問題なく終わってしまったことだ。いや、より正確に言うならば、大部屋での戦闘があっさりと終わってしまったことになるだろうか。

 要するに、昨日からの悩みである次にどうするかという問題に直面しているということだ。


 まあ、今日の確認で結論は出てしまったんだが。

 とりあえず、明日は大部屋挑戦後にストーンゴーレムへ一当てしに行く。

 無理にストーンゴーレムのところに行く必要はないんだが、今日の感じからすると前回のような事態になることはないだろう。


 一応、レベル上げをするために考えられる案はいくつかあった。

 昨日も考えたように、ダンジョン内のモンスターがリポップするのを待って複数回の挑戦を行うというもの。他にも近くの公開ダンジョンに遠征するという案や、ダンジョン管理機構の佐藤さんに連絡して巡回の際に第1階層のモンスターを残してもらうように依頼するという案だ。


 まあ、案として挙げておいてなんだが、追加の2つはないと思う。

 近くの公開ダンジョンに行ったとしても、家のダンジョンのように俺が専用で使用できるわけではない。いくら活動する探索者が減ったからといって、他の探索者が0ということはないだろうし。

 そうなると家のダンジョンと同じようにモンスターが不足するという可能性が高い。しかも、出てくるモンスターも家のダンジョンとは違ってくるはずだ。確か、近くの2つは虫系とアンデッド系だったと思う。

 まあ、どちらも人気のないモンスターなので空いている可能性もなくはないが、俺は探索者として強くなりたいのではなく、家のダンジョンを攻略したいだけだ。だったら、他所のダンジョンに慣れるために時間をかけるよりも、家のダンジョンに複数回挑戦したほうがましだろう。


 佐藤さんへの連絡については、まあなくはないんだが、心情的にいやだ。ストーンゴーレムに挑戦すると言って巡回ルートを変えてもらったのに、無理だったので訓練用に他のモンスターを残してくださいというのはなんとなく恥ずかしい。それ以外に手がない状況であればともかく、他に方法があるのであれば避けたいところだ。どうせなら、佐藤さんへの連絡はストーンゴーレムを討伐したというものにしたい。


 というわけで、ストーンゴーレムに一当てするか、複数回挑戦するかという2択になった。で、今日の感触からしてストーンゴーレムに一当てで問題ないだろうという結論に至ったわけだ。


 とりあえず、今日は明日のストーンゴーレムへの一当てのためにウエストポーチの新調だけして、ゆっくりと休むことにしよう。

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