第14話
夫婦に納まり半年過ぎた…。
ふみは数えで18歳…。
家業の雑貨屋、よろづ屋を一生懸命2人で働き、店はますます繁盛していく。
康次が仕入れに出掛ける時は、ふみが店番こなしてる。
しかし出先の康次は急ぎ、仕入れを済ませ、みやげを買って、足早々とふみへと帰る。
「お前さん、おかえり」
「みやげだよ。一緒に食おう」
「まぁ嬉しい…お茶をそれでは淹れましょう」
みやげの餡のつまった饅頭を仲睦まじく頬張る2人…。
ふみは、尽くし、康次は優しくふみを労る…。
しかし、ふみは思いに耽り、康次さんに今までの自分の事を話さなければと胸が痛む…。
今の2人の幸せを壊して割ってしまったならば、おらはひとりで死んでしまおう…ふみは、話す決意を固めた…。
時は暮れ六つ酉の刻、そろそろ店を閉めようとふみは奥へ夕げの仕度、康次は表を片付ける。
丁度その時、共を連れた客が店にやって来る。
「草鞋はあるか?草鞋をくれ…お伊勢参りに間に合わす草鞋を一足おくれ…」
「はいはい、こちらになりますが…お客様、もしや庄屋の源蔵さん?」
「いかにも儂は源蔵だが、店主は何で知っておる?」
「私の名前は、康次と言います。生みの母はキクと言い、兄は文吉、姉はさよ…父は早くに亡くなりまして、幼き頃に養子に出された康次です…」
「おぅお!これはなんと奇遇なり」
「田舎の母は達者ですか?兄や姉は健在ですか?」
「そうか、お前の兄と姉だがな、実の兄妹でありながら、禁忌を犯し子を宿し、罰が当たって息絶えた…母は兄妹の落とし子を育てていたが病で死んだ…儂がその子を面倒みてたが、恩を裏切り逃げてった」
「そうですか、感謝いたします。いつか、墓参りに行きましょう」
奥で聞いたあの声は、おぞましげなり源蔵の声…。
さぁさ、草鞋も買ったし、明日は物見遊山に行こうかね…お伊勢様にはまだまだあるし、銭もたっぷり用意ある…。
さぁさ、お伊勢参りじゃ、物見遊山じゃ、お伊勢参りじゃ…お伊勢参りじゃ…。
源蔵の声が遠くに聞こえ、それさえ消えて、とばりが降りた…。
夕げの膳を脇に置き、ふみは康次に畏まる…。
「おらの話がしたいです。話す決意が出来ました…」
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