第二文「面白くない男で、すみません」



ふぅぅぅぅぅ・・・。


今日何度目かの、深い溜息を吐いた。


視線を上げてカウンター越しに見つめるいつもの席に、やはり彼女の姿は無かった。


「・・・はぁ・・・」


「体調悪いの?」


うっかり声に出してしまった所為で、背後から店長さんがそう声を掛けてきた。


「あ・・いえ、なんでもないです!テーブル片付けてきますね!」


あわてて振り返り、笑顔で取り繕うと、そそくさとホールへ向かった。



ついさっきお客様の退席されたテーブルを拭きあげながら、どうしても彼女を探してしまう。


あの日から、二ヶ月ほど。


毎週のように、週末の午後は僕の働いているカフェで、季節のオススメドリンクとスイーツや軽食なんかをオーダーして、観葉植物の並ぶ窓際の席で過ごしていた彼女は、まるで姿を見せなかった。





「・・・やっぱり」


声を掛けるタイミングが悪かったかな。


「読書が終わってからの方が、気分がそがれなくて良かったかも知れない・・・あ、でも、そうすると。余韻に浸る邪魔にもなるかなぁ・・・」


客の視線が僕に集まっているのを感じてはっとする。また声に出てしまっていたらしい。気をつけないと。









彼女に初めて出会ったのは、半年ほど前になる。


普段は大学の講義が終わった平日の夕方にシフトを組んでもらい、土日は休みを貰っていた。

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