【救世主】とかいう凄そうな職業を選んだら、チュートリアルから抜け出せなくなったんだが。─最初の町から進めるフルダイブ型RPG─

抹茶嫌いのmattyan

序章 主たる器になり得るか

第1話 俺が救世主だ

 世界売上部数、3億8000万部を超える最高峰のフルダイブ型RPG。

 その名も「Occupations to Find From Your Life」。

 単語の頭文字を取って「オフィール」。

 日本語に直訳すれば「あなたの人生から職業を見つける」となる訳だが、プレイヤーの人生観や経験から運営がその場で職業を作り出すのだ。


「──って、運営何人居るんだよ!?」


 ウィキ○ディアを見ながら思わず自室で叫んでしまったのは、この俺“芽鷺めさぎ 大亜だいあ”だ。

 そして片手には「オフィール」を遊ぶ為の機器の一部と、その心臓部分である機器が雑多な机の上に置いてある。


「しっかし…俺のダチがやけに自慢してくるもんだから買ってみたが、評価はクッソ高いな?」


 何でも世界ランク2桁……だとか何とか言ってた気がするが、4億人程プレイ人口がいる中での2桁ならばかなり凄いのだろう。

 それにしても、いつの時代もカッコつけているつもりなのかは知らないが、逆張りしてくる輩は居る。

 しかし、その者達を押しのけて評価は平均して星5のままだ。

 それがどの通販サイトでも変わらないって言うんだからかなりの物なのだろう。


「ま、物は試しだ。国家ぐるみで騙されてると思ってやってみっか」


 そうして俺は早速そのヘッドセットを頭に付けた。




── 

──ゲームを起動します…シャットダウンはし──ないで下さい

──


 少しづつ目を開けてみるとそこには。


 広大な緑と少し田舎に行かなければ無いようなロッジ。街の外に目を向けてみれば、現実には決して存在しないモンスター達。


 そしてそれらを倒しているのは──人間プレイヤー


 火の玉なんてレベルじゃない。

 少し杖をかざせば氷柱が幾つも現れ、大剣を振るえば地面が割れる。

 中にはベルトに何かをかざしてメタルチックなスーツに着替えているやつもいる。


「──ははっ!スゲェ…スゲェよコレ!?」


 思わずそう叫んでしまうのも無理がなかった。

 しかし。


「……お言葉ですが、あまり騒ぎすぎると脳のキャッシュが増えるのでオススメしませんよ」


「うぉわっ!!……おい、話しかけるんだったら合図くれよ」


 背後に立っている……というか半透明な足場が気づいたら出来ていた。

 その上には、まだ新人と言ってもおかしくないような出で立ちだが、それでいて優秀であろうことが分かる顔……というと失礼だな。

 ともかく、出来る女性ということが分かる。とても美人さんだな。


「残念ですが、運営もそう余裕が無いのです」


「おっ……と言うとあんたは?」


「えぇ、あなたが待ち望んでいた通りの人間でしょう。日本支部よりやってまいりました笠木と申します」


「笠木さんか!それはそれはどうも!」


 そうすると、彼女は少し頭を傾げて


「……どこかでお会いしたことが?」


と言うので、慌てて訂正する。


「いや、そうでは無いんですけど……今後とも何かしらヘルプとかに対応して頂ければな……なんて?」


「はぁ……?えぇ、まぁそれが私の仕事なので」


「え、マジすか」


 というのも、生まれてこの方彼女いない歴=年齢……今、こんなネタも古いだろうが、そんな俺だからこそ、女性との繋がりは大切にしていきたいのだ。


「さて、とりあえずは職業……ジョブの判定などの設定へと参りましょうか」


「よっしゃ、気合い入れてくぞッ!」


「……気合でどうこうなるものでも無いですけどね」


 ジョブの判定。

 このゲームで一番最初にやることであり、一番重要な要素でもある。

 プレイヤーの人生観や経験、様々な点からその人物に合った職業を一から作り上げていくのだ。

 とはいえ「自分の脳内が他の人に知れ渡るみたいで嫌だ」なんて人も居るわけだ。

 そんな人間の為に用意されているのが基本ジョブ。

 ……しかし、これだけでもかなり要素は詰まっているのだが。


 ──基本ジョブ一覧──

 ・剣士

 ・拳士

 ・魔法使い

 ・斥候

 ・盾使い

 ・槍使い

 ・斧使い

 ………

 ……

 …


 と、全て合わせたら20職はあるだろう。

 更に、ここから楽しみなのはジョブ進化制度だろうか。


例えば剣士ならば…


       →重戦士→重騎士…

   →戦士

       →狂戦士→狂騎士…


剣士 →剣豪 →剣聖


       →操剣士→空剣士…

   →双剣士

       →双刀士→二天剣士…


こんなふうに枝分かれが発生してどんどんどんどん進化していくのだ。

 しかも、今確認されているのがこれだけ……というか、これ以上に存在はしているんだが、更にここから新たな発見が起こる可能性もあるのだ。

 こいつは流石の俺でもワクワクせざるを得ない。


「えー……まずはプレイヤーネームの登録をお願いします」


「あーっと、本名の方が良いか?」


「いえ、チュートリアル終了後でも変えられますのでご自由にどうぞ」


「そうか。ならとりあえず“ぎたぁ”にしようかな?」


「……何故“ギター”?お得意なんですか?」


「いやいや!違う違う!本名の真ん中を取って……芽鷺 大亜……ぎたぁだよ!」


「えー……かなりダサいのではと思いますが?」


「はぁ?チュートリアル終わったあとに変えられるんだろ?ならいいじゃないか?」


「選択する職業によってはチュートリアルに丸一日かかる場合もあります。出来れば安牌を取った方がいいかと」


「……それ先に言って欲しかったかもな」


「まぁ、普通一時間位で終わりますけどね」


「それでも長いな!?」


「ふふふ……かなり力を入れておりますので」


 と、諸々の設定を終えていく。

 たまに「ダサッ」や「え、本当にそれで行くんですか?」などと文句を言われながらも、ジョブ判定の直前まで俺は怒りを蓄えていた。

 ……ここでキレたりして運営に目をつけられても困るしな。


「では、確認しますね」


──プレイヤー情報──

名前: イグサ アメダ (雨田 藺草)

年齢:21 性別:男

ジョブ:─── レベル:───

習得スキル:───

称号:───

運営からの一言!:ステータス作成おめでとう!!君はまだまだ新米だから、スタッフがグチグチ言うのも受け止められないフレンズなんだね!じゃ、ジョブ判定頑張ってね〜!!あ、あとキレても目は付けたりしないから安心してね!存分にツッこんじゃって!!


「……運営からの一言?」


「はい、何か物事が起きる度に変化しておりますので、ヒント代わりに使うと何かに役に立ったり立たなかったりですね」


「……もしかして舐めてる?」


「おっ、良いですね。早速運営からのアドバイスを駆使してますね」


「そうそう!俺も折角だからツッコミをしようかな……って、んな訳あるか!」


「ふふふ…っ!芽鷺さんって面白いですね!」


「ははっ!おうともよ!」


 あ、可愛い。

 笠木さんって物静かで教室の端っこで読書してそうな真面目クール系美少女ってイメージだったんだが、こんな快活に笑うこともできるんだな。

 ちなみに要らない豆知識だが、イグサ アメダというのは本名をアナグラムにして少し変えただけのなんの捻りも無い名前だ。

 ただ、イグサという名前が気に入ったので今後も使っていきたい名前ではある。


「さてさて……じゃあ、本番行っちゃいます?」


「スゥ……いよいよか」


「えぇ、準備は?」


「──ドンと来い!」


「ジョブ判定、開始しますっ!」


 そうして前に繰り広げられたのは、走馬灯のような景色だった。

 そう、あれはダチ……俺の幼なじみをガキ大将から守った時の出来事。

 あれは、高校生に上がった時にナンパされた幼なじみを無理やり彼氏面して追い返したこと。

 あれは、レポートに追われていた幼なじみを助けた時のこと。

 あれは、このゲームに誘われた時に一緒に居た子が居た堪れないようにしていたから自販機で奢ってあげた時のこと。

 あれは──


「──ハッ!?」


「お…お?お、おぉ!!これはこれはこれはっ!?レアジョブじゃないですか!?!?」


「……へ?」


 白い文字でスクリーンのようなものに書き出されているのは先程も言った基本ジョブ。

 それが横に掃けていくと、真ん中に連なるのはまだ見ぬジョブ、ジョブ、ジョブ。


 ──イグサのジョブ一覧──

 ・【医者】

 ・【心理学者】

 ・【カウンセラー】

 ・【案内人】

 ………

 ………

 ・【聖人】

 ………

 ………

 ・【勇者】

 ・【英雄】

 ………

 ………

 ・【竜騎士ドラグナー

 ……

 ……

 ・【救世主メサイア


「勿論、聖人や勇者などの光の使者系ジョブもとても強力なのですが!!!マスター系ジョブっ!!!これは絶対絶対取った方がいいですよ!!!」


 確かに、そのジョブだけ異様に黒色に輝いていて目立っていた。


「で、でも勇者なんて滅多に見れないんじゃないの?」


「そうなんですよ!!滅多に見れないのが吹き飛ぶくらいのがあるんですよっ!!!あと、闇の使者系ジョブも一切無いし……そもそもの表示ジョブ数が多すぎますっ!!!私こんなにあるの先輩からも聞いたことないです!!!」


「は、はぁ……?そのマスター?系ジョブって何が凄いの?」


「現在このソフトは3億8000万部を突破して、もうまもなく3億9000万部に届こうかというところです。それだけのプレイヤーの中で一体どれだけの人が習得していると思いますか?」


「え、4億分の……4万とか?」


「ぶっぶー!!そんな訳ないじゃないですか!!4!!たったの4人しか観測されてないんですよ!!」


「1億人に1人!?!?……ほぇえ、マジかぁ」


「マジですっ!!大マジです!!その4人も今では世界トップランク4位以内です!!全員がですよ!!ぜ・ん・い・ん!!!」


「逆に5位の人は……?」


「あぁ、あの人もとてつもないですよ……何と職業は【剣聖】。基本ジョブであそこまで上り詰めたんです。全く物好きですよねぇ……」


「じゃあ、別に【救世主メサイア】じゃなくても……」


「ぶっぶー!!ダメです!!あの世界5位の【剣聖】ですら『奴らには叶わん。基本ジョブでもマスター系ジョブ以外なら誰でも勝てるが、あれは格が違う。文字通りマスターなのだから、それ以外に負けるなど許されていないのだろうよ(ドヤァ)』って言う名言を残してますので!!!」


「何か凄い雰囲気あるな……」


「でしょう!?!?だからあなたには【救世主メサイア】になって頂きたいんですよ!!そしたら私のキャリアも一緒に救ってくれそうですし!」


「何か本音……?」


「とにかく!!オレツエー!!ってやりたいでしょう!?男でしょう!?女の子と仲良くなりたいでしょう!?だったら押すんですよ早く!!」


 そんなことを言いながらスクリーンの前でワタワタしている笠木さん。

 押せとばかりに指を指しまくっているが、どうしようか。

 とはいえ、ダチとの約束もあるしな。

 世界ランク二桁なんて言うからにはそれなりに鍛えなきゃいけないだろうし──


「──分かりました」


「……!」


 そうして俺は前に歩みを進める。

 笠木さんは少しづつスクリーンから離れていき、世紀の瞬間を見るかのように目を見開いている。


「俺は……【救世主メサイア】になる!俺が世界丸ごと、全部救ってやるよッ!」


 こうしてこの世界に新たな主系ジョブが発現した。

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 どうも〜、初めましての方は初めまして!


 そうでない方も初めまして!(???)


 抹茶嫌いのmattyanと申します!


 今回は1話だけお試しで書いてみて、後はほったらかしにする予定の小説です。


「え、なんで!面白そうに見えるのに!」


 なんて思ってくれた方、いるかもしれません。


 結論から申しますと、単に自分の仕事量が半端なくなるのと、やる気がないとまるで筆が進まないので、こちらの小説は気が向いたら……書こうかな、なんて無責任な気持ち故に書いた小説だからですね。


 芽鷺君改め、藺草君の本題はここからになっていくんですが、頭の中では出来ていても出力するのが苦手なもので……申し訳ないです。


 かなり好評なように見えたり、別の小説の方で一度区切りが着いたらもしかしたら更新をするかもしれません。


「え、じゃあ何で書いたん?公開する必要あったん?」


 なんて言う方。


 せっかく生まれたアイデアを潰すのは何かこう……違うかなって思いまして。


 これからの彼らに期待しつつ、密かに応援してくださればいつか更新が来る……かもしれないです。


 自分も感想などを貰えるととても嬉しいですし、やる気がもりもり湧いてくるので、調子に乗って割とすぐに更新が来る可能性もあります()


 さて、長々しいあとがきもこれくらいにしておいて、下の♡と☆をポチっと押して応援して下さると、とっっっっても励みになります!


 ではまた何処かで!




 …笠木さん、また何処かで出そう。

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