最悪の初めて 03

綾音の彼氏が連れてきた友人は、背が高くて茶髪にピアス、大人な笑みを称えながら煙草を吹かしていた。


「こちら、淳志さん。イケメンでしょ?」


「あ、うん……」


「はじめまして。淳志です。リカちゃん、聞いてたよりも可愛いね」


「えっ、あ、ありがとう……ございます」


「じゃあ、あとは二人でごゆっくりー」


「え、ちょっと、綾ちゃ……」


「んじゃあ、行こっか」


綾音が笑顔で手を振るなか、リカは淳志に肩を抱き寄せられてズルズルと連れて行かれてしまう。


急に密着した淳志からは煙草の臭いとそれをごまかすようなフレッシュな香水の香りが漂い、それが妙に大人っぽく感じてドキリと胸が揺れた。


淳志の車に乗せられてホテル街へ入る。


「リカちゃんは初めてなんだって?」


「あ、はい」


「俺が手ほどきしてあげるから安心して」


「……はい」


運転しながらも煙草を吸う淳志はとても大人っぽく見えたけれど、ただそれだけで。

これから淳志とエッチをするんだと思うと不安でいっぱいになった。


さっき初めて会った彼に信頼など置けるはずもない。

それなのにエッチをする。

処女を捨てるためだけに。


リカは腹をくくった。

今さら嫌だと言って帰れるわけがないし、例え逃げたとしても紹介してくれた綾音に悪いと思ったからだ。


「緊張してんの? 可愛いとこあるじゃん」


ホテルに入るなり、淳志はリカをベッドへ押し倒した。

何の前触れもなくキスをされる。


キスは初めてじゃない。

だけど初めてのキスとは違って、胸のときめきやドキドキ感はどういうわけか何も感じられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る