フェイクニュース

mirailive05

フェイクニュース(空色杯の習作)

「ようこそおいで下さいました、金田一先生」

 旅館に着くなり、金田一は、地元の名士を名乗る男から歓迎を受けた。

「お噂はかねがね」

 そう言いつつ、男は金田一に名刺を差し出した。有力地元企業の代表取締という肩書が書かれていた。

「数々の難事件を解決し、今回は私の町の事件を解決していただいて。まさに名推理」

 金田一は、トレードマークのもじゃもじゃの髪をがっしがっしとかきながら、照れくさそうにうなずいた。

「私は無類の推理マニアで、この事件の驚天動地の推理内容には体を震わせるような感動を覚えました」

「今回のフェイクニュース事件のことですか」

「まさに!」

 男は体を震わせてうなずいた。

「まさかあのニュース自体がライバル企業が地元新聞を丸め込んで書かせたフェイク記事だったとは、想像だにいたしませんでした」

 それはついこの間、金田一が解決した事件のことだった。

 ライバル企業が扱っている主力商品に、近隣某国の原材料が使われ、それに新種のウィルスが混入していたかもしれないとのうわさが立ち、その影響でライバル企業の業績が悪化してしまったが、それは男の企業が流したフェイクニュースだったというのを地元新聞がスクープしたというものだ。

 そうして濡れ衣を着せられ、訳も分からずに業績が悪化していったところに、重役の一人に招聘された金田一がフェイクニュースを流したこと自体がフェイクだったことを、解き明かして解決した。 

「ところで、最新の驚くべきニュースがあるんですよ」

「ほう、先生の方からとは。で、どのような?」

「あれには続きというか、嘘のような本当のことがありましてね」

 金田一は一枚の名刺を取り出した。

「私、私立探偵の金田一かねだはじめと申します」

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