第3話

 そんな狩る者のための学校になぜ無職と言われた俺が通っているのか、そもそもなぜ俺が無職と言われているのかそれはひとえに俺にジョブがないからである。

 別にジョブの欄に無職と書かれているわけではない........決してない!

 それなのに俺がこの学校に通ている理由の一つはくしくも無職と言われている原因である空欄になっているジョブの欄、そしてもう一つが今のところ俺しか持っていないスキル『夢』にある。

 一応ステータスボードという本人しか見れない(アイテムや鑑定などの特定のスキルまたは、他人にステータスを開示する意思があれば見せることができる)ものに表示されているスキルの欄の気になるスキルの詳細を知りたいと思えばそのスキルの下に効果が記載されるのだが、俺のスキル『夢』に記載された効果が『少しの睡眠でもぐっすりと眠ることができ夢を見る』という使い道がよくわからない効果のスキルなのだ。

 この学校に入学する際自身のステータスを記載し提出をし、なおかつ学校に置かれている鑑定の効果があるアイテムでも鑑定をしており間違いがないことは確認されているのだが未知のスキルでありもしかしたら何か別の効果もあるかもしれないということとほかにジョブを持たないものがどんなスキルを覚えるのかなど、試験も合格ラインに達していたので俺はこの学校に入学することが決まった。

 ちなみに先ほどから話の中に出てきているステータスはゲームのステータスのようなレベル、HP、MPなどの数値は一切記載されておらず個人の名前、性別、年齢、種族そしてジョブとスキルの欄しか存在しない。

 そのためスキルにある魔法なんかは同じ魔法でも個人によって使える時間というか回数が違うのだがその原因がゲームでいうところのMPを使っているのではないかと言われているが目に見える数値がないため現在本当のところは分かっていない。

 まぁそんな感じで入学したはいいが、ジョブがない使えるスキルを一個も持っていないという理由で周囲からは笑われ、馬鹿にされる毎日。

 俺としてはまだそれだけならいいがあのくそめんどくさいチャラ男に絡まれ、今ではダミー用の財布をポケットにしまいあいつらに金をとられるのと同時にこっちも取りダミー用の財布にしまいあいつらには他人の金を使ってると思わせ実際は本人たちの金を使っているというめんどくさいことをしている。


「ほんと、めんどくせ~」


 俺は目的の自販機の前につくとどこからともなくさっき取られた財布とは別の財布を取り出し小銭を取り出しながらつぶやく。

 自販機に視線を戻しどれにしようか目線を動かしながら悩む。

 結局いつものでいいかと思い小銭を入れ目的の飲み物のボタンに指を伸ばす。

 しかし突然横から伸びてきた指によって別のボタンを押されてしまった。

 そして取り出し口に飲み物が落ちる音を聞きながら指の主へと視線を移す。


「何がめんどくさいんだ歩武あゆむ?」

「........いつものやつだよ。そんなことよりどうしてくれんだよ勇翔ゆうとこれ俺が苦手なやつじゃねえか」

「気にするな歩武、俺は好きなやつだからな!」

「人の金で勝手に買うなよ!」

「ははははは。ごちになります」

「はぁ~今度なんかおごれよ」

「おう、まかせな」


 この気安く接してくる男、天霧あまぎり 勇翔ゆうとは腐れ縁と言っていいほど長い付き合いがありそのおかげか俺のジョブなど関係なく接してくれる数少ない人間だ。


「そんなことより、何の用だよ勇翔」

「ん?いや~、ただ見かけたからっていうのもあるけどよ。あ、そうだ。午後の授業の模擬戦組もうぜ」

「あ?あー今日模擬戦の授業だったか.......まぁ、ほかのやつと組むよりは楽か。いいぞ.......つっても、いつものお前と組んでるだろうが」

「それはそう!」

「.........はぁ~まあ、そういうことならそろそろ移動して準備しないといけないな」


 俺はそう言いながら近くの時計に目を向ける。

 そこに表示されている時刻は準備を含めると俺が言ったようにそろそろ移動しないといけない時間だった。


「え、マジじゃん!」

「さっさとそれ飲んじまえば?それとも持ってくのか?」

「あ、そうじゃん!これどうすっかな......つかこれ炭酸だから今飲むのきついしな。あとにするわ。そんなことより急ぐぞ歩武!遅れるぞ!」


 勇翔はそう言いながら走って行ってしまった。

 俺はその後姿を見ながら自動販売機に向き直り小銭を入れ直し目的の飲み物のボタンを押す。

 俺はしゃがんで取り出し口を開けいつも選んでいる飲み物、麦茶を持ち落ち着いた足取りでついていくのだった。

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