第1話
午前中最後の授業の終わりを伝えるチャイムにより俺は目を覚ます。
まだかすかに眠気を感じながらも結局一回も開かなかった教科書などをしまい持ってきた菓子パンを取り出すためにカバンに手をかける。
「夢咲あ~ゆ~む~く~ん。ちょっといいかな~?」
すると無駄に人の名前をゆっくりと呼ぶ男子生徒が近づいてくる。
俺は小さくまたかと思いながらため息をつく。
俺はカバンへと伸ばした手を引っ込めその声の主へと顔を向ける。
そこには制服を着崩し、髪を染め無駄にチャラチャラとした男子生徒がいた。
「何かな?たけし君」
俺は取り繕った笑顔で用件を尋ねた。
「いや~、ちょっと頼みたいことがあってさ~。すぐ終わるからさ、ちょっとついて来てくんない?」
「え~と、今から昼飯食べようかと思ってたんだけど.......」
「あ?そんなの後でもいいだろ。すぐ終わるって言ってんだからさっさと来いよ無職が、おまえに拒否権なんてねぇんだよ」
そう言ってたけし改めチャラ男は、俺の腕を無駄に力を籠め掴むと無理やり連れて行こうとする。
俺は再度小さくため息を吐くと無駄な抵抗はせずチャラ男により廊下へと連れだされる。
するとそこにはチャラ男の連れである数人の取り巻きが笑いながら待っていた。
そこから俺はチャラ男と取り巻きに囲まれながら空き教室へと連れていかれた。
「じゃぁ、さっそくなんだけどよぉ。金、くれよ」
「えっと.....昨日もそう言って持って行ったじゃないか。そのせいで今全然お金ないんだよ」
「そっかそっか~......そんなの俺たちにはどうでもいいんだよ!お前は素直に金さえ出せばいいんだよ!」
そう言ってチャラ男は俺の腹めがけてこぶしを振るってきた。
そのこぶしはまっすぐに俺の腹にあたり鈍い音が鳴る。
「くっ」
「毎度毎度、無駄なことさせんなよな。お前みたいな無職と違ってこっちは暇じゃないんだよ」
俺は殴られた個所を抑えながらうずくまる。
そんな俺に対してチャラ男はいつものように俺の制服のポケットをあさり財布を取り出すと数枚入っている札を取り出し、用がなくなった財布を投げ捨てた。
その光景を見ていた取り巻きどもは不愉快な笑い声をあげながらチャラ男に続いて空き教室を出て行った。
それからしばらくチャラ男たちの笑い声が遠のくのを確認してから、何事もなかったかのように立ち上がる。
再度しかし先ほどよりも大きいため息を吐くと床に落ちた財布に近づき拾い上げると手に持った先ほど取られた枚数よりも多い札を財布に入れなおした。
「別に金をとられんのはいいんだよ。もともとお前らのだからな。けどなぁ、毎度毎度......どこが暇じゃねえ、だ。どう見てもくそ暇だろ。逆にこっちがお前らと違って暇じゃねえよ。はぁ~.........さっさと戻って飯食うか。またイフェイオンのバカのせいで疲れてんのに無駄なことさせんなよなほんと」
ため込んでいた愚痴を誰もいない教室に吐き捨てると俺は空き教室を後にした。
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