冥土書店〜ここは『捨てられた本』が集まるお店

神白ジュン

第1話

 本も人と同様に死ぬことがある。

 捨てられたり、燃やされたり、切り刻まれたり。 

 あるいは人々に存在を忘れ去られてしまうか。

 こうして完全に読まれなくなった本たちは一体どうなってしまうのか。


 

 実は冥界にそんな本たちが集まる場所があるという。

 

 この冥界に構える書店には、現世で捨てられたり、存在を忘れ去られた本が集まってくる。読まれなくなった本の終着点だから、とも言う人もいる


 冥界にあるため、ここを訪れる人は皆死んだ人たちなのだが、娯楽の一つとして読書は人気のようで、客足が絶えることは中々無いそうだ。


 

 「おーい、今週の分が来たぞ、手分けしていつもの作業やるぞ!」


 いつものように店主の声が響いたかと思えば、店員たちが集まってきて本の修復作業を始める。


 ここに辿り着く本は、中々酷い扱いをされた本も多い。殆どのページがビリビリに破れている物、留め具が外れバラバラのものや、ぐちゃぐちゃに文章を塗りつぶされたり焼かれて黒焦げの様なものもある。

 一方、綺麗なままの本もある。だがそれらはいつのまにか忘れ去られ、遂に何十年も誰にも読まれることのなかった本だ。


 だがここでは、現世で復元不可能な程廃れてしまった本でも綺麗に復元できるらしい。


 そうして今日も書店の本棚に新しい本たちが並べられていく。


 悲しい事にここに来る本の量は増えているらしい。


 電子書籍の登場や、そもそもの読書離れなどが要因だと考えられる。


 だが逆に言ってしまえば、今これを読んでいる貴方が、本を大切に保管しておくとか、読んだ本の記憶を忘れ去ることさえしなければ、本はここには辿り着かないのだ。


 

 

 ここは現世で役目を終えた本たちが最後に行き着く場所。


 もう、本たちが悲しい思いをすることはない。


 ここでは捨てられることも、燃やされることも切り刻まれることもない。

 

 そしてここに存在する限りは少なからず誰かに読まれ続けていくのだ。

 

 

 


 

 


 


 

 


 

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