月光路の先へ
蒼の森
第1話 孤独と孤独
『ねぇねぇ、愛が重いってどう言う意味?』
流行りの少女漫画片手に、突拍子もない質問をする君に、兄と僕は目を合わせてパチクリするしかなかったっけ。
困った僕等の顔を見て、君は大きく口を開けて『ガハハハ』って笑ってさ。
だって僕等、あの頃まだ小学3年生だったんだよ。
なのに大人になった今でも、あの日の事。時々鮮明に思い出すんだ。
春休み、夏休み、冬休み、我が家のお隣さんである祖父母宅に泊まりに来てた君と小さい頃から一緒に過ごしていたから、幼馴染み?兄妹?そんな感じかな。
僕等、兄弟よりも喧嘩も強くて、泥んこも虫も平気。幼い頃の僕と兄はこっそり『ダンプカー女』って呼んでたんだよね。
そんな君が、中学2年の春。隣家に越して来てさ。
同じ中学に転校して来るから、仲良くするようにと親父に言われたけど、幼馴染みだし親父は今更何を言ってんだろう?って思ってさ。
だって、引っ越し初日に我が家で一緒に食卓を囲んで、1番の食欲で。何1つ変わらない笑顔でいつも通りの君だったから。
気付いてあげられなかったんだ。
あとは、思春期なりの照れとか、言葉では説明出来ない色んな気持ちが、ぐちゃぐちゃで深く考えられなかった。
実は君の両親が不慮の事故で亡くなって、祖父母宅に身を寄せる事になったと知るまでは。本当、何も・・・
いつも、突拍子も無い質問をして、困った僕等の顔を見て、大きく口を開けて『ガハハハ』と笑う君だから。
事情を知ってからは、変に気を遣い過ぎてしまって、よそよそしい態度になってしまったりしてさ。それが、君をますます孤独な気持ちにさせてたとも分からずにね。
僕等兄弟も小学校に上がる頃に母親を乳がんで亡くして、闘病生活が長がった母の記憶が正直曖昧にしか残っていないのだけれど。
同級生と母親の日常を目にすると、やっぱり辛くなって、こそこそ泣いてさ。でも、僕等は双子だから、1人じゃなくて、いつも2人。励まし合って、支え合って寂しさに耐えて来れた。
それでも、母が生きてたらどんな生活だったのかな?考えずにはいられなかったっけ。
だから、君は本当強い娘だなって思ってたんだよね。
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