第22話 鶴丸家➁
鶴丸家②
重子はずっとソワソワしている。今日は待ちに待った保護犬とのお見合いの日。約束の時間、重子はお見合いをしてくれる森下というボランティアの家のインターホンを鳴らした。
はあい、というハスキーな女の声がしてドアが開けられた。玄関でシッポをブンブン振る愛想のいい大きなラブラドールと茶髪にロングヘアのちょっとヤンキー風の女が出迎えてくれた。リビングに導かれ、重子は目をキョロキョロさせてカーペットに座った。
「お待たせしました。」
女は重子と向かいあうように座った。すると、待ってましたとばかりにどこから来たのかチワワが膝に乗ってきた。
女は膝に乗ったチワワの頭を撫でると契約書と書かれた紙と名刺を差出した。
「はじめまして、アニマルハピネスの森です。まず初めにうちの団体のシステムをお伝えしますね。」
森下トヨコと書かれた名刺と契約書をながめながら重子は一言も聞き漏らすまいと緊張の面持ちで話を聞いた。
「2週間トライアル期間を設けていましてトライアル期間の間に保護犬をご家族に迎えて大丈夫かをみてもらいます。迎えてもらえるということになれば今までかかったワクチン代、避妊手術代等を含めたこちらのお代金をお支払い頂きまして、譲渡となります。」
「あ、あのトライアル中に困り事の相談や質問は受け付けてもらえるんでしょうか?」「それは大丈夫です。確か鶴丸さんは犬を飼うのが久しぶりと申込みのところに書いてありましたよね。」
不安げな重子にトヨコはニッコリと笑った。
「譲渡後も時々、お渡しした犬の状態をご報告してもらい、適切に飼育して貰えないとこちらが判断した場合は引き取らせてもらうこともあります。」
「え?譲渡後も犬をお返ししなくちゃならないことがあるんですか?扱いがわからなくて、これは虐待ですよってことになってしまったらどうしましょう。」
重子は予想外の話にオロオロと不安げな表情をみせた。そんな重子を見て、トヨコは鋭い眼光をフッと緩めた。
「まあ、そんなにあることじゃないので大丈夫ですよ。心配しないでください。譲渡後もいつでも相談にのるので安心してください。」
トヨコの言葉に重子は少し安心した。
「うちのシステムに納得頂けましたら犬を連れてきますね。」
重子はウンウンとうなずいたものの、トヨコの言葉にひっかかった。
「あれ?その子じゃないんですか?」
重子がトヨコの膝の上にのっているチワワを見やると、トヨコの後ろからやって来たパピヨンがチワワをゴリゴリと押しのけた。
「チーさん、え?え?」
「ポンのバカ、退いて。」
苦笑いするトヨコの膝の上からチワワはすっかり追い出され、パピヨンが黙ったままドッカとのった。
「この子が鶴丸さんとお見合いする子です。」
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