第6話 新たな世界へ⑥
新たな世界へ⑥
ガタン。
バンが止まり、扉が開いた。いつの間にか眠ってしまったミルクティー色のチワワは物音に驚いて目を覚ました。
「さあ、お家に着いたよ。」
わけがわからずキョロキョロしている間に保護された犬たちは明るい温かな部屋に運ばれた。
初めて見る場所。たくさんの知らない人や犬猫。
ここはどこ?私たちどうなるの?
不安でわけがわからないうちに保護された犬達はシャンプーと診察を受けた。
ミルクティー色のチワワも初のシャンプーに初めは唸って噛みつこうと抵抗したものの疲れもあり、すぐされるままにおとなしくなった。
「美人さんになるよー。」
泡立てたシャンプーを丁寧に流してもらい、ドライヤーで濡れた毛を乾かしてもらう。そしてシャキシャキと音がしてハサミが入れられた。
しばらくしてようやく抱えられてケージに戻された。
「アンタ、見違えたわ。」
ミルクティー色のチワワが声の方を見ると可愛らしい茶色のトイプードルが見ていた。
誰?
怪訝な顔をしていると、そのトイプードルは楽しそうに笑った。
「やだね、この子は。私はリルよ!」
「ええっ!おばさん、目があるよ!」
毛玉のようになっていたリルおばさんは顔をはじめ、体中をさっぱりカットしてもらい、つぶらな目を初めて明らかにしたのだった。
「よく見えるようになったわ。お腹いっぱいご飯も食べさせてもらえて幸せ。」
「うん。ここが保健所なの?」
「ハハハ、違う違う。アンタらは助かったんだよ。これから人間と暮らせるように訓練して、新しい家族を見つけるのさ。」
上からいきなり声が降ってきた。驚いたチワワとリルおばさんが見上げるとケージをのぞきこむようにして大きなクリーム色のラブラドールがいた。このラブラドールは太郎という名前。保護団体が併設している動物病院で手術の時の献血のために飼われている。献血の時以外は敷地内を人間の用事をしながら歩いている。
ミルクティー色のチワワのように保護されてきた犬猫達にここでの暮らし、これからのことを教えてもいる。もちろん、それは太郎のボランティア。
「人間なんて嫌!人間と暮らすなんてあり得ない!」
ミルクティー色のチワワはケージの扉の格子に唸り声を上げながら噛み付いた。
やれやれと頭を左右に振ってラブラドールの太郎はまた来ると言い置いて行ってしまった。
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