本を一冊買うのが物凄く大変だった話
石月 和花
本を一冊買うのが物凄く大変だった話
これは昨年の秋頃の実話である。
この頃私は丁度、よつばと という有名漫画に今更ながらハマっていた。
人から勧められて当時15巻まで発行されていたの内のとりあえず1巻〜10巻を買って読んでみたのだが、これが私に非常にマッチしたのだ。
悲しい気持ちになる事なくストレスフリーでくすりと笑えて、登場人物は皆とても可愛らしい。ブラック労働環境でメンタルがだいぶ疲弊していた私にはこの上ない癒しの漫画だった。
そして、ある秋の日曜日。
私はよつばとの次の巻、11巻と12巻を買いに最寄りのJRの駅ビルへとやって来ていた。
よつばとを買って直ぐに帰って、家でのんびりと楽しむ。
そんなありふれた日常を楽しむ為にうきうきとした気分で駅前に出かけたのだが、駅に着いて早々に、私は辛い現実に直面するのだった。
電気系統の点検で駅ビルのテナントが全部休業なのだ。勿論、本屋も。
……
これには愕然とした。
日曜日に、点検するか?!
普通こういうのって平日じゃないのか?!
って言うか何故ピンポイントで今日なの??
私運悪いの??
そんな事を思いながら、私は次の行動を考えた。今日、どうしてもよつばとが読みたいのだ。
しかしこの駅前には本屋は駅ビルの一軒だけしかない。
十年くらい前なら、駅の側に本屋は3軒あったのだが、気がつくと一軒にまで減っていたのだ。徒歩で行ける距離に他に本屋は無い。
だから私は衝動的に電車に飛び乗って、一駅先のターミナル駅に降り立ったのだった。
ここの駅なら、徒歩圏内に本屋が4軒あるからよつばとは楽勝で手に入れられる思っていた。
しかし、結果的にここでもまた私は洗礼を受ける事になったのだった。
私はまず始めに駅ビルの本屋へと向かった。大きい本屋なので、ここで難なく買えると信じて疑わなかったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
なんと、11巻だけ売り切れなのだ。
私は心の中で
嘘だろう?!
と叫び動揺したが、直ぐに気持ちを立て直した。何故ならここには本屋がまだ3軒もあるから。
そして次に駅の目の前のイオンの中にある本屋を見に行ったのだが、なんとそこには本屋が無かった。
閉店したのだ。
閉店の事実に動揺し、そしてなんだか雲行きが怪しくなってきて、果たしてよつばとを買うことが出来るのかと不安になりながら、私は3軒目の本屋を目指した。
私鉄とJRとの連絡通路の途中にある本屋なので小さいお店だ。
だからここでも売り切れていたらどうしようとドキドキしながら棚を覗いた。
……あった。
そこには11巻と12巻が、両方揃って棚に陳列されていた。
こうして私は、4軒目にしてやっとよつばとを手にすることが出来たのだった。
家から15分程の駅ビルの本屋に買いに出ただけなのに、こんなにも時間がかかる買い物になるとは思わなかった。
昔だったら電車に乗るまでもなく他の本屋を梯子出来たのに、本当にいつのまにか本屋が消えてしまっていた事実を突きつけられた。
思い立ってフラッと本屋に行って、欲しい本を買う事が、いつの間にか難しい世界になっていたのだ。
私は昔そこにあった本屋たちに想いを馳せて、今まだここにある本屋だけは決して失ってはいけないと、本買う時は必ずここで買おうと決意したのだった。
多分それが本屋への応援になると思ったから。
だから地元の本屋にお願いです。
マイナー雑誌のコミックだけど、ダンジョン飯と女の子園の星は超人気作品です。初回入荷数を増やして下さい。
発売日の次の日に買いに行ったら売り切れてて入荷未定と言われて結局ネットで買った人間からのお願いです。
私は、地元の本屋で漫画を買いたい。
本を一冊買うのが物凄く大変だった話 石月 和花 @FtC20220514
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