本屋の姫と高校生

🔥SOU🔥9月01日より新作投稿開始

第1話

 本屋それは僕にとっては、未知の世界へ旅立つための『切符』を購入する場所だ。

 だが今日は生憎の雨。

 これが移動を伴う旅立ちであれば、憂鬱ゆううつな気分になるが、僕の場合は少ないお小遣いで買う貴重な『本が濡れる』と言う問題はあれども、鞄の中に入れビニール袋にでも入れて置けば大丈夫なのだが……鞄を漁っても生憎とビニール袋は鞄には入っていなかった。


「はぁ」


 短い溜息を吐くと暦の上では、もう春が近いと言うのに真っ白い息になった。

 意を決して、駐輪場に愛車のパンペーラを置き、自動ドアを潜りカーペットで入念に靴底を拭う。 

 真新しい雨梅雨に塗れた紺の学生服に身を包み、クロックスのゴム底で塩化ビニールの床を踏み締めると、『ギュッ』『ギュ』という乳幼児が履いている。

 音の鳴る靴を履いているような気分になり、恥ずかしいと同時に気が滅入る。


「久しぶり加藤君。今日は買い物?」


 そう言って声をかけて来たのは、バイト仲間の武田さん。

 清楚可憐な絶滅危惧種の大和撫子と言った雰囲気のおっぱい登山家としては、残念なスレンダーな女性だ。


「ええ……そっちはバイトですか?」


 姫カット(昔みた漫画で知った)のぱっつん前髪以外をワザと靡かせこう言った。


「そ、誰かさんがバイトのシフトに入らなかったせいでね」


 チクリと嫌味を言う。


「ぐ……」

「それに、私の胸を見てまた小さいと思ったでしょ? そう言う視線に女の子は敏感何だよ? おっぱい星人と言えどチラリと横目で見るぐらいにしないと女の子に嫌われるよ?」

「見た目だけなら直球ど真ん中なんだけどなぁ……」

「おい、コラ! 私に不満があるっていうのか?」

「いえ、何も……」


 大学生の武田さんは、バイトリーダーで僕の教育係りでもあったのだが、こういう性格と性的対象が女性と言う事もありこうして軽口を叩ける程度には仲良くして貰っている。


 こうして俺は剣術の指南書とラノベを数冊購入した。

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