アルの魔法屋 魔法書あります

大黒天半太

魔法書はいかがでしょう?

 いらっしゃい、アルの店へようこそ。今日は、何を差し上げましょう?


 このアルの店は、何でもある店です。無い物も、ある店ですがね。


 お客さん、魔法使いの法衣ローブが新品だね。私も、初めて袖を通した時には、汚したらどうしようか、って立ち居振る舞いには、いっそう気を付けたもんさ。


 まぁ、慣れて来ると、汚さない行動が身に付く奴と、汚しても気にならない奴に、分かれて行くけどね。


 え? 私はどっちかって?

 どっちかと言うと、うっかりよく汚してしまうけど、すぐにきれいにするから、中間派閥かな。


 早い時期に覚えた魔法は、法衣ローブの汚れを根本から浄化する、洗濯系クリーニングでは上級の術だったな。


 で、今日は何をお探しかな?

 『学校』で学べない、珍しい魔法?


 なるほど、大きく出たな。

 向上心があるのは、いいことだよ。


 その方向性が間違ってるのを、誰かに悟られて、『学校』に通報されるまでは、ね。



 『間違ってる』なんて、最初ハナっから決めつけるのは、失礼だって?


 ご意見ごもっとも、だね。


 まぁ、自分が間違ってるかどうかなんて、なかなか自分じゃあ、わからないものさ。

 外からの方が、実際、自分の状況がよく見えることもあるし、ね。



 お探しの魔法、あるかも知れないよ。奥の一角は、古い魔法書マジックブックが置いてあるから、見てみるといい。


 巻物スクロールに書かれた魔法は、使い切りだが、魔法書マジックブックに書かれた魔法は、学習するか研究して、自分の魔法書マジックブックに転写出来れば、ずっと使えるようになるからね。

 まぁ、『学校』の、呪文スペル魔道具アイテムの研究者みたいに、巻物スクロールの魔法を解析して、自分の魔法書マジックブックに転写するような奴もいない訳じゃないが、まともな魔法使いとは程遠いな。


 ここにある魔法書マジックブックは、弟子を持たなかった魔法使いの遺品がほとんどだ。

 特に、珍しい魔法や、特殊な用法の魔法は、弟子に受け継がれなければ、『学校』が回収してしまうからな。


 ただ、今は忘れられた、古い魔法はよく見つかるよ。


 新しく似た系統の魔法が流行ると、古い魔法はつかわれずに魔法書マジックブックにあるだけになることも多いが、決して使えなくなった訳じゃないからね。


 古い手法も状況によっては、有効な場合も多いから。


 まぁ、わざわざ複数の同系統の魔法を集めて、何かを極めるなんて、今の若い魔法使いには、流行らないのかも知れないが。

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