薩摩武士とエルフ

猫カイト

第1話出会い

俺は才能と言う物に憧れた。

天才と評された剣士たちに憧れた。

その天才に少しでも近づこうと俺は鍛練に励んだ。

だがどれだけ鍛練を続けようと俺が憧れた剣士には遠く及ばなかった。

才能がそれだけ残酷だと言うことを知りながら認めたくなくて鍛練を続けた。

そんな鍛練も終わりを迎えようとしていた。

最近自分の身体が鉛のように重く感じる。

剣を降る速度も遅く、まるで亀の歩みのようだった。

それが老いと認めたくなくて鍛練を続けていたある日、

俺は死んだ。

 

目の前にあるのは先が見えぬ暗闇。

ここで俺の人生が終わるのか?

まだ天才にも追い付いていないのに。

俺はその暗闇を歩む。

ただひたすらに先も見えぬまま歩みを続けた。

まだ終わりたくない。

天才を越していないのだから。

そんな未練とも言える感情を糧に俺は進む。


どれだけ歩みを続けたことだろう。

永遠にこの闇が続くのではとすら思えたある時光が見えた。

それが死後の世界の光なのか、否!そんなことはどうでも良かった。この永遠に続く闇を抜けられれば。

その光を越えた先の光景は今でも忘れない。

「ここは天国か?」


僕は今地獄をみている。

幻と思いたいほどの地獄だ。

近くの仲間たちは燃え、家々は業火のような炎に晒されている。

これを地獄と言わねば何を地獄と言えよう。

何故このような地獄が広がっているのかわからぬまま時は無慈悲にも過ぎ去っていく。

 鎧をきた兵士たちが近づいてくる。

「これも祖国の為悪く思うな。」

そんな台詞を男は吐き捨てる。

僕は終わりを覚悟した。

仲間達の所に行けるのだ。

こんなに嬉しいことはない。

そんな風に自分に言い訳をしながら目をつむったそんなとき、声がきこえた。

「ここは天国か?」


「何者だ?貴様は!?どこから現れた!?」

兵士は慌て、剣を向ける。

「剣を向けるという事は切られても文句は言えぬな?」

男が剣を抜いた瞬間、兵士の一人は血を流す。

「何が...」

兵士は何が起こったのか理解できず、手についた血を見て自分が切られたことに気づく。

気づいたときにはもう体は動かなかった。

「久々の剣だ鈍っておるの。」

その一言に周りは旋律を禁じ得ない。

鈍っていてこれだけの速さなのかと。

「囲め!囲めばなんと言うことはないわ!」

兵士のリーダーと思わしき男は兵士の恐怖を書き消すためにそう叫ぶ。

その声を聞き恐怖を和らげた兵士は男の周りを囲む。

「1.2.3.10人程度か。」

男は落ち着いた様子で兵士の数を数える。

それはまるでパンの枚数を数えるような、

人間と見ていないような数えかたに私は震えた。

「いつまでそんな冷静!?」

「喋りすぎじゃ。」

そんな言葉を言い放った男は兵士のリーダーを切り捨てる。

「ヒィ隊長!?」

兵士はいきなりの光景に気が動転し隊長を見る。

その隙を男は見逃さなかった。

「敵から目を離す何ぞ素人じゃの」

一瞬の内に血飛沫が枚散る。

男は剣を捨て、兵士が持っていた刀に持ち変える。

「将の仇じゃ!かかってこんかい!」

そんな一喝で周りは戦意を失う。

「に、にげろぉ!」

兵士たちは一目散に逃げ出す。

「つまらん連中じゃ。」

男は剣を腰にかけ、顔についた血をふきながら不機嫌そうに告げる。

「あ、あのありがとうございます」

僕は助けてもらった礼を告げた。

「別におまんを助けたわけじゃなか。あいつらの方が戦いがいがありそうやっただけじゃ。」

この人は戦いがいがあるだけという理由で10人もの兵士に戦いを挑んだのか?狂っていると私は思った。

男は立ち去ろうとする。

「あの、名前を...」

「名前か。なんじゃったかの覚えとらん。そうさな、名無しでいい。」

「名無しさん...私を連れていってくれませんか?ここにいても悲しくなるだけなので」

「連れていって何の得があるんじゃ?」

当然だ。僕のような子供を連れていっても何の得もない。だがこの人の性格上...

「敵がいるところなら知ってます。」

この人は戦いが好きなのだ。

そう僕は感じ取った。

「そうか。ならついてこい小僧!」

男はせかせかと歩いてく。

本当にこの人についていっていいのだろうかと後悔しながら歩を進める。

こんな出会いで私と名無しさんはであった。













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