第24話 勘違いが増殖中

「完璧、コスプレだわコレ……」


聖女歓迎の夜会に参加する為にドレスアップした小百合は、鏡を見て呆然とした。


「コスプレ……? なんでしょう? すいません、勉強不足でして……。あ、あの、とてもお美しいです!」


「ありがと、豪華で凄いなって思っただけ。ところでさ、私をエスコートしてて良いの? 本当はジーナをエスコートしたいんじゃないの?」


「ジーナは、裏方で嬉々として働いています……。彼女は伯爵令嬢なので、今日のパーティーに参加する権利はあるのですが……」


「あの子、真面目そうだもんね。仕事を投げ出したりしないか」


「そうですね……。何度かパーティーに誘ったのですが、全て断られました……」


「なむい。ねーねー、ケネスはジーナにプロポーズとかしないの? 身分差があって駄目とか?」


「ジーナは貴族なので、相思相愛なら障害なく結婚出来るのですが……」


「ならさっさとプロポーズすれば良いじゃん。絶対断らないって。昨日会ったばかりの私ですら、ジーナがケネスの事大好きなの、分かるよ。ケネスもジーナの事が好きでしょ?」


「は、はい……会ったばかりのサユリ様にもバレバレですか……」


『私は心を読んだからだけど、どーも使用人の人達にはバレバレみたいね。ケネスとジーナを見守る会とかあるっぽいじゃん。ちょーウケる。心を読んで味方と敵を見極めようとしたら、来る人来る人ケネスとジーナを見守ってるんだから面白過ぎる。私をライバル扱いしてる人までいたな。おかげで、嫌な感情はあんまり読まなくて済んだけど……。使用人の人達はジーナを平民だと思ってるから、悲恋になってるのよね。今朝来たメイドさんなんて、ジーナを見たら自分の気持ちを押し殺してケネスに仕えてる可哀想な子って思ってるんだもん。勘違いもここまで来るとすげーわ。もうアレだね、二時間ドラマじゃ入りきれないね。連ドラだよ。連ドラ。やっばい、楽しいわぁ。どーせ半年しかいないんだから、他人の恋路を見守るのもアリよねー』


小百合は心の中を隠しながらケネスをけしかける。すっかりジーナとケネスが気に入った聖女様は、見守る会にどうやったら入れるだろう。そんな事を考えている。


「バレバレだよ。どう見てもケネスとジーナは相思相愛なんだけど、なんかすれ違ってるよね。なんでジーナは、ケネスに恋人がいるって思ってるの?」


「う……分かりません……なんでですかね……」


「ケネスが勘違いさせるような事、言ったんじゃないの?」


「そんな事言ってませんよ! 僕はジーナが好きなのに!」


「なんか……ごめん」


「いえ……僕こそ大声を出して申し訳ありません……」


二人の会話は、たまたま通りかかったメイドが一部を聞いていた。見守る会の会長である彼女は、聖女様がケネス殿下に迫ったが、殿下はジーナへの愛を宣言して毅然とお断りしたと涙ながらに語った。


その情報が会員の者達を刺激して、すぐに王太子に直談判された。平民でも、ジーナとケネスは愛し合っていると必死で訴えた。話を聞いたビクターは、神妙に頷いて、フィリップに泣きついた。

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