思い出の本屋
むーが
思い出の本屋
そうだ。本屋に行こう。正月に帰省して実家でのんびりしていたらふとそう思った。
俺は小学生の頃から本を読むのが好きで暇があれば読書をして、休み時間に図書室に入り浸っていたほどだ。
今は上京しているが仕事が忙しく本屋に寄る時間がなかった。せっかくの休みだから、色々な本を買ってしまおう。
実家の近くにある本屋は駄菓子も売っていたからよく小さい頃に買って食べていた。
ああ、懐かしい。
車に乗り本屋へ向かう。
あれ? コンビニになっている。
どう見ても本屋はそこに存在していない。困惑して何回も見直すが、コンビニが本屋になる訳もなくただそこにあった。
とりあえず他の人の邪魔なので適当に車を止める。スマホで母に連絡をとってみた。
「もしもし、母さん。俺なんだけど、今大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。それでどうしたの?」
「家の近くの本屋さんって閉店していたんだっけ?」
「あれ? 言っていなかったかしら? そうよ。去年の10月辺りに閉店したの。残念よね」
「そうだったんだ。母さん、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「じゃあ、電話切るから」
平然を装って通話を切る。
あって当たり前だったはずのものがない。心にポッカリ穴が空いたような感覚がする。じわじわと涙が出てきた。目の前が涙で歪んで見えてくる。
もうすでにあの場所、あの空間がなくなってしまった事をやっと理解した。
袖で拭っても拭っても涙が溢れて鼻水も止まらない。
顔がぐしゃぐしゃになりながら本屋との思い出を思い返す。でも思い出せば思い出す程に涙が鬱陶しい位出てもう駄目だった。
ひとしきり泣いて目がショボショボになった頃にようやく涙が収まった。
鏡で自分の顔を確認するとそれはもう酷かった。目は泣きすぎて腫れているし、なんだけど鼻もかみすぎてヒリヒリする。
仕方ない。気晴らしにコンビニでも行くか。
車を降りて元本屋だったコンビニに向かった。
思い出の本屋 むーが @mu-ga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます