第一印象

その男の第一印象は『素直な男』だった。


初めて会ったのは真面目な場。

その男は無表情で淡々と話し続けていた。少し感情を抑えているように見えた。

話しぶりから頭の良さが透けて見える。早口で、的確で、無駄が無い。


私は少し空気を変えたかった。

軽い冗談を挟むと、その男は無表情を崩して笑った。「あはは」と無邪気に笑った後、すぐ下を向いて無表情を取り戻す。

不思議なのは笑う場所が他人と違う点だった。笑いのセンスが少し違うと言えば良いのだろうか。

その分、周りに合わせていないのがわかった。この男は本当に楽しい時に笑っている。

何回か冗談を言っていると、その男は私に本筋から離れた質問をするようになった。他にも冗談を聞きたそうだった。私がまた冗談を言う度に男は「あはは」と周りの目も気にせず無邪気に笑っていた。


素直な男。


その男と初めて会った時、私はそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る