女神の楽園《アテナワールド》~少女は兄を救うため、美闘姫《ディーヴァ》となって舞台で踊る

とんこつ毬藻

Stage 1 闘技大会、開幕編

第1話 ミナモー01.開幕

「さぁ~、今年もやって参りました。七名の女神によって選ばれた精鋭達が集う、美闘姫闘技大会ディーヴァコロシアム。天上の楽園に創られたこの闘技場にて、今年も世界一の美闘姫ディーヴァが決まるのです! 予選会を勝ち抜き、本選へ進んだ姫たちによる、一回戦がいよいよ始まります」


 円形の闘技場。舞台中央、マイクパフォーマンスを披露する女性のケモ耳が揺れる。両サイドには、予選会を勝ち抜いた二人の女性が既に舞台上へとあがっている。


「さぁ、本選一回戦がいよいよ始まります。イグニスコーナー、オリンポス国代表! その鍛え抜かれた肉体で振るう鉄球は破壊と殺戮の象徴。グラマー・ドレッド!」

「うぉおおおおおお!」


 鉄球を振り回し、己の力をアピールする褐色肌の女。2メートル近い体躯に身につける肩と胸、大事なところのみを覆った鎧はいかついとげがついている。応援団らしき会場の者達から歓声があがる。


「続いてアクアコーナー。サザナミ国代表! 今年初出場のダークホース! 可憐な巫女が天上の舞台へ舞い降りたぁ~! 彼女は華奢な身体を蹂躙されてしまうのか? ミナモ・ミカガミ!」


 頬を赤らめた状態でお辞儀をする少女。海のさざ波を纏ったかのようなスカートに、水色のビキニアーマーを身につけている。海色マリンブルーの髪に身につけた銀色のティアラが陽光を反射し、一瞬煌めく。


「尚、予選と違い、この闘いは全世界へ中継されております! 相手を殺す事は禁止ですが、舞台上は武器による攻撃も、魔法も、何をやっても構いません。観客席は結界により護られております。場外はありません。相手が戦闘不能になるか、降参すると勝利となります。己の全力を持って、相手へ挑んで下さい」


 マイクを持ったケモ耳の女の子が戦闘へ巻き込まれないよう舞台から離れる。そして、審判席へ戻った彼女が開幕の合図を告げる!


美闘姫闘技大会ディーヴァコロシアム一回戦、第一試合、始め!」



 天上の楽園に創られた舞台に今、開幕の鐘が鳴る――



★★★


 女神の楽園アテナワールド――七名の女神によって創られた人間、魔族、亜人、獣人が共存する世界。世界には各女神の加護を受けた七つの国があり、互いの力を誇示しつつもバランスを保っている。


 美闘姫闘技大会ディーヴァコロシアムは、女神より神託を受けた美闘姫のみが出場を許される女性限定の闘技大会だ。七つの国の中央にある天空の島、アナスタシアにて一年に一度開かれる。


 そんな闘技大会の舞台に今、闘いとは無縁とも思える容姿の少女が立っている。まるで、フリルのついた水色のビキニで海水浴へ着た女の子だ。会場の熱気に呑まれたのか、自身のなだらかな双丘を包む胸当てカップ部分をそっと片手で押さえる彼女。


(もう~、どうしてこんなに露出度の高い衣装な訳?)


 勿論、彼女がこの衣装を纏う事は初めてではない。予選会を勝ち抜いて理由があって此処に居る訳だが、この女神の神託により与えられた闘姫装バトルドレスという露出度の高い衣装に、そう簡単に慣れる事が出来ないのだ。


「うぉおおおおおおお! ガキ~~! 死ねぇ~~!」


 そうこうしている内に、鉄球を振り回す対戦相手厳つい女が猛然と襲い掛かって来た。明らかに頭を潰しにかかった女の一撃は空を切り、舞台上に大きな孔が空いた。素早く横へ移動した少女はゆっくり息を吐く。


(何が殺し・・はなしよ。本気で殺しにかかってるじゃない!)


「死ねぇ~~! 死ねぇ~~! 死ねぇ~~!」


 女神が観ているこの舞台では、頭を潰した程度・・・・・・・で死ぬ事はない。死ぬ前に治癒部隊が控えているからだ。しかし、少女――ミナモは分かっていても、当然死ぬような想いをしたくない訳で。


 少女のつま先が地面を弾き、くるりと回って着地。水面を弾くようにゆっくりと跳ねる少女。しかし、鉄球は空を切る。不思議な光景に観客が息を呑む。


「ちょこまかとガキが嘗めやがって……! このままミンチにしてやる! 殺戮地獄車さつりくじごくぐるま!」

「出たぁ~~~! グラマー選手得意の殺戮地獄車だぁ~~~ミナモ選手、一度も攻撃をせずに負けてしまうのかぁ~~!」


 実況のケモ耳っ娘が立ち上がる! 回転力をあげた鉄球が鉄の壁のようにグラマーの身体を覆い、周囲に風が巻き起こる。そのまま一直線で少女との距離を詰めたグラマーはミナモを肉塊にしようと突進する! 


「い、一体どういう事でしょうか!?」


 この時、会場へ響いた音は、肉を潰した音ではなかった。それは、水面を思い切り弾いたかのような音。鉄球は水の膜のような壁に阻まれ、少女は腰のビキニに挿していた棒のようなものを広げ・・、片手で柄の部分を持ち、開いた部分の裏の部分をもう片方の手で押さえていた。


「終わりですか? じゃあ、次はこちらの番ですね?」


 少女が地面を跳ねる度、ある筈のない、波紋のようなものが見えた。回転し、跳ね、持っている何かを返す。やがて、グラマーの背後に立った少女は、武器を閉じた状態でゆっくり呟いた。


「サザナミの舞――ユラギ」


 鉄球を繋いでいた鎖が斬り裂かれ、球が地面に落ちる。鍛え抜かれた体躯に細かい傷がつき、ビキニアーマーの胸当てが落ちた事で、驚き、思わず両胸を押さえるグラマー。鍛え抜かれた大きな果実が露わになった事で、会場からは驚きと歓声があがる。


「き、貴様ぁ~~~ガキがぁ~~何をしたぁ~~!」

「何をって……を踊っただけですよ?」


「踊った……だと!?」

「サザナミの舞、私が住んでいる村に伝わる踊りです。私、一応巫女なんで……あ、これはサザナミの扇って言います。私が扱う武器のひとつ・・・です」


 扇を広げ、閉じる彼女。そして、次にミナモが放つ言葉に、グラマーの怒りが沸点に達する。


「あなたは武器を失いました。悪い事は言いません、降参して下さい」

「どこまでも嘗めやがって……お前なんか、この拳だけで充分だ! その頭蓋を……この手で潰してやる!」 


 グラマーがミナモへ向け突進する。しかし、ミナモは既にグラマーの背後へと廻り込み、開いた扇を一閃した後だった。


「ごめんなさい。私、ここで負ける訳にはいかないので」


 扇を閉じた瞬間、グラマーの両手が地面に落ちる。切断面と腹部から赤い液体を飛散させた彼女は背中から舞台上へと倒れるのだった。


「勝者――ミナモ・ミカガミ!」


 こうして大歓声の中、美闘姫闘技大会ディーヴァコロシアムが幕を開ける。


(お兄ちゃん……絶対助けるからね……)


 これは女神の楽園アテナワールド美闘姫闘技大会ディーヴァコロシアムにて闘うひとりの少女と、美闘姫ディーヴァたちの物語――



☆☆あとがき☆☆

こんばんは、数ある投稿作品より見つけてくださいまして、ありがとうございます。他サイトのコンテストへ以前投稿したバトルファンタジー作品となります。面白いと思っていただけたなら、フォロー、応援よろしくお願いします!

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